チャゴス諸島の主権移譲は「無期限で停止」、英閣僚が議会で認める トランプ氏の支持撤回が理由と

イギリス下院で答弁するダウティー氏。ダークスーツにピンクのシャツ、赤いネクタイをしている
画像説明, スティーヴン・ダウティー国務相(欧州・北米・海外領土担当)は、チャゴス諸島をめぐる合意が無期限で停止されたと認めた(13日、ロンドン)
この記事は約 5 分で読めます

ジェニファー・マキアナン政治記者

イギリス政府はこのほど、インド洋のチャゴス諸島の主権をモーリシャスに移譲する合意を無期限で停止した。担当閣僚が13日の議会で認めた。この合意は先に、ドナルド・トランプ米大統領が支持を撤回していた。

イギリスとモーリシャスは昨年5月にチャゴス諸島の主権移譲で合意した。合意では、チャゴス諸島最大のディエゴ・ガルシア島にある英米共同軍事基地の管理権をイギリスが維持し、年間1億100万ポンド(約216億円)で99年間、借り直すことになっていた。

トランプ氏は当初、この計画を支持していたが、最近ではスターマー氏に合意の撤回を求めていた。今年1月にはこの計画を「大いなる愚行」「完全な弱さからくる行動」と非難していた

BBCは11日、キア・スターマー英首相が、トランプ氏の支持撤回を受けてこの計画を棚上げしたと報じた。これを受け、最大野党・保守党が下院で緊急質問を行った。

答弁に立ったスティーヴン・ダウティー国務相(欧州・北米・海外領土担当)は、時にいら立ちをにじませながら、責任はトランプ氏にあると繰り返し説明した。そのうえで、今会期中は関連法案を進めないと認めた。

この答弁に先立ち首相官邸の報道官は、5月13日に始まる次の会期に主権移譲の手続きを完了させるため、法案を再提出するかどうかについて明言を避けていた。

次会期に法案を提出するかは言及避ける

ダウティー氏は議員らに対し、英米間で交わされているディエゴ・ガルシア島の軍事基地の共同運用に関する協定の更新が、「政治レベルでは合意不可能になった」と述べた。

これは、英・モーリシャスの合意が「アメリカ現政権および前政権と緊密に協調し、交渉された」もので、トランプ氏もかつて「非常に強力で力のある合意」だと評していたにもかかわらず、という状況だ。

「ここ数週間で、アメリカ大統領の立場は変わったように見える」とも、ダウティー氏は述べた。

「その結果、実務的な意味において、イギリス領インド洋地域(チャゴス諸島の名称)を防衛目的で利用可能にする1966年の英米合意、いわゆる『交換公文』を、政治レベルで更新できなくなった」

そのうえでダウティー氏は、「明らかに遅れが生じ、今会期では時間切れになったのは遺憾だが、この条約の必要性、あるいは別の手続きや法的規定を整える必要性という事実自体は、変わっていない」とした。

一方で、交換公文の更新は「この条約の批准に必要なこと」だとも述べた。

昨年5月の合意後、イギリスでは手続きを進めるための法案も提出されたが、今会期の「ディエゴ・ガルシア軍事基地およびイギリス領インド洋地域法案」の最終案は、上下両院でまだ合意に至っていない。

13日の議会では、ダウティー氏は最大野党・保守党のハリエット・ボールドウィン議員に対し、この合意は批准されていないため、遅延期間中にはいかなる支払いも行われておらず、今後も行われないと認めた。

「この条約に関連する費用については、条約が可決され、関連法が成立しなければ、支払われることはないと明言できる」

保守党のプリティ・パテル影の外相は、トランプ氏の支持がないまま英政府が合意を強行することはないと確認するよう、ダウティー氏に求めた。

パテル氏が、「次の会期で、たとえ国王の演説に含まれていなくても、新たな法案が提出され、この降伏条約が発効可能になる可能性を排除できるか」と質問すると、ダウティー氏は保守党が「この手続きを始めた」と指摘したが、新たな法案が提出されるかどうかについては、直接の言及は避けた。

議会に先立ち、政府が法案を再提出するかどうかを問われた首相報道官は、「国王の演説の内容について先走ったり推測したりするつもりはない。どのような法案も、通常の方法で発表する」と述べていた。

議会はすでに、今会期から5本の法案を「繰り越す」ことで合意しているが、チャゴス諸島関連法案は含まれていない。

同報道官はまた、政府当局者が「今後の対応について、アメリカおよびモーリシャスと協議する」と述べた。

昨年合意された条件では、イギリスはインド洋の群島の主権をモーリシャスに引き渡す一方、ディエゴ・ガルシア基地を99年間借り戻すことになっており、政府の公式数字では総額34億ポンド(約7300億円)とされている。

一方で、この合意に反対する人々は、インフレを考慮すれば実際の費用は約350億ポンド(約7兆4900億円)に達する可能性があり、中国が群島に拠点を構えるリスクを招くと主張している。