ハンガリー総選挙、オルバン首相の与党敗れ16年ぶり政権交代へ 新興野党が圧勝

マジャル氏がハンガリー国旗を左手で持ち、笑顔で支持者らに応えている。周囲にはスマートフォンを掲げたり、手を伸ばす支持者らが多数集まっている

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画像説明, 野党・ティサの圧勝が確実になり、国旗を手に支持者らと喜ぶマジャル党首
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ハンガリーで12日、議会(一院制)の総選挙があり、新興野党が圧勝した。オルバン・ヴィクトル首相は敗北を認め、16年ぶりに政権交代が実現することになった。

開票率98%超の時点で、マジャル・ペーテル氏が率いる中道右派の政党「ティサ(尊重と自由)」が、定数199の議会で138議席の圧倒的多数を獲得する見通しとなっている。オルバン氏の与党「フィデス・ハンガリー市民連盟」は55議席にとどまり、極右政党「私たちの祖国」は6議席となっている。

この選挙はハンガリーとヨーロッパの将来を左右する重要なものとして国内外で大きく注目された。投票率は過去最高の79%に達した。

オルバン氏はかつてソヴィエト連邦による占領に反対の立場だったが、現在ではロシアのウラジーミル・プーチン大統領の親密なパートナーとなっている。欧州連合(EU)がロシアのエネルギーへの依存からの脱却を目指すなか、ハンガリーは安価なロシア産原油やガソリンの購入を継続。EUによるウクライナへの900億ユーロ(約16兆8000億円)の融資を阻止した。こうしたことから、オルバン氏はEUで極めて不人気な指導者となっていた。

一方、マジャル氏は選挙戦で、EUとの関係の良好化を訴えた。

オルバン氏は、開票率約60%の時点でフィデスの大敗が確定的な状況となったのを受け、支持者らに向けて演説。「選挙結果は明白で痛ましいものだ」と敗北を認めた。

オルバン氏は、「私たちには国を統治するという重責がないので、地域社会を再建しなくてはならない」と主張。フィデスに投票した約250万人以上への感謝を述べた。

そして、同党支持者らを決して落胆させないとの決意を表明。「私たちは決して諦めない。これがみんなが知っている私たちの姿だ。決して諦めない。これからの日々は、私たちにとって傷を癒やすものだ」と述べた。

オルバン氏がフィデス(FIDESZ)と書かれた演台でマイクを前に目を伏せて口を閉じている。背後ではスーツ姿の人々が拍手している

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画像説明, 敗北を認めたオルバン首相
動画説明, ハンガリーの「歴史的瞬間」を現地報告 オルバン首相が総選挙で敗北

一方、ティサのマジャル党首は、首都ブダペストの壮麗な議会議事堂を臨むドナウ川沿いの広場で、歓声を上げる支持者らに向かって勝利を宣言。「私たちはやった」、「力を合わせ、ハンガリーの政権を倒した」と述べた。

また、「みなさんは今日、奇跡を起こした。ハンガリーは今日、歴史を刻んだ」と語りかけ、今回の選挙での勝利を、1848年のハンガリー革命や、1956年のソヴィエト連邦占領に対する蜂起になぞらえた。

投票率が過去最高だったことについても言及。「民主化後のハンガリーの歴史において、これほど多くの人々が投票したことはかつてなかった。これほど強力な支持を得た政党もかつてなかった」とした。

スーツ姿のマジャル氏がマイクを前に口を開いている

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画像説明, 演説するマジャル氏

オルバン政権の改革撤回と汚職対策

マジャル氏はかつてオルバン氏と盟友関係だった。その後、手厳しい批判者に転じた。

選挙戦では、オルバン政権下で導入された教育・医療制度の改革の撤回や、汚職対策、司法の独立性の回復を公約に掲げた。また、与党フィデスの忠実な支持者らを富ませ、国家資源を浪費させているとして国民に嫌悪されている利益供与制度「NER」を根絶すると約束した。

こうした改革のための憲法改正には議席の3分の2(133議席)が必要だが、ティサはこれをクリアする見通し。

マジャル氏は、国営メディアの改革も視野に入れている。テレビ局M1はこれまで、オルバン氏寄りで、フィデスの方針べったりの放送をしてきた。かつて独立系だったウェブサイトも、フィデス側によって買収され、同党の方針に沿った報道姿勢を取っている。

野党支持者らが道路を埋め尽くし、ハンガリー国旗を掲げたり、白いシャツの女性が標識によじ登って叫んだりしている

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画像説明, ティサの圧勝を受け歓喜する支持者ら(ブダペスト)

ロシアには痛手、欧州は祝福

BBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長は、今回の選挙結果に対してロシア政府はまだ公式に反応していないが、プーチン大統領にとっては明らかに非常に悪いニュースだと指摘。

プーチン氏にとってオルバン氏は長年にわたり、EUと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の指導者にあって親ロシア政権、親ロシア、親プーチン氏で、ロシアへの制裁に反対してきた、極めて強力な切り札のような存在だったが、それを失うことになると説明した。

欧州指導者らはティサの圧勝を祝福した。

イギリスのキア・スターマー首相は、マジャル氏がハンガリー次期首相になる見通しとなったことを祝い、同氏の勝利を「ハンガリーだけでなく、ヨーロッパの民主主義にとっても歴史的な瞬間だ」とした。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、マジャル氏とティサに「圧勝」を祝うメッセージをXで公表。「建設的なアプローチ」が勝利したとした。そして、ウクライナは協力と良好な関係構築の準備ができているとした。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は「今夜、ハンガリーでヨーロッパの心臓はより力強く鼓動している」とソーシャルメディアに投稿。「ハンガリーはヨーロッパを選んだ。ヨーロッパは常にハンガリーを選んできた」とした。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相は「ハンガリーは意思を示した」とコメント。マジャル氏と協力し、「強固で安全、そして何より結束したヨーロッパを目指す」と期待感を示した。

スペインのペドロ・サンチェス首相は「今日、ヨーロッパが勝利し、ヨーロッパの価値観が勝利した」とした。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、「民主的な参加の勝利、ハンガリー国民のEUの価値観へのコミットメント、ハンガリーのヨーロッパへのコミットメント」を歓迎するとした。