欧州の航空機燃料は「おそらくあと6週間分」、国際エネルギー機関が警告

バックパックを背負い、キャリーケースを携えた人物が、カメラに背を向けて窓越しに飛行機を見つめている。

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セオ・レゲット運輸担当編集委員、ジェマ・クルー・ビジネス記者

国際エネルギー機関(IEA)のトップ、ファティ・ビロル事務局長は16日、欧州には「おそらく6週間分の航空燃料しか残っていない」と警告した。事務局長はさらに、供給の遮断が続けば、近く欠航が発生する可能性があると述べた。

IEAは14日に発表した月次の石油市場報告で、ヨーロッパが中東からの輸入の少なくとも半分を代替できなければ、6月に在庫が転換点に達するとした。

32の加盟国にエネルギー供給と安全保障について助言するIEAは最新の報告で、湾岸地域からの輸出が世界市場における航空燃料の最大の供給源だと指摘。それに加え、韓国、インド、中国といった他の主要輸出国の製油所も、そもそもが中東からの原油輸入に大きく依存しているため、現在の危機は、航空燃料市場の仕組みそのものを混乱させていると報告した。

湾岸地域から航空燃料を輸送する主要航路のホルムズ海峡は、アメリカとイスラエルによる攻撃への対応として、イランが6週間以上にわたり事実上封鎖している。そのため、燃料価格が急騰し、供給不足への懸念が高まっている。

米・イスラエルがイランを攻撃した2026年2月末まで、価格は500~1000ドルの間を推移していたが、開戦以降は1500ドルを超え、2026年4月15日には1560ドルとなっている。出典はブルームバーグ

欧州各国は現在、湾岸地域からの供給を他地域からの輸入で代替しようとしている。アナリストによると、その供給源はアメリカやナイジェリアだという。

IEAは、これまでヨーロッパは航空燃料輸入の約75%を中東に依存してきたと指摘。ここ数週間でアメリカの航空燃料輸出が急速に加速しているものの、仮にこれらの出荷がすべてヨーロッパ向けだったとしても、失われた供給の半分あまりを補うだけだと警告した。

IEAは複数のシナリオを分析した結果、ヨーロッパが中東から輸入する分の50%超を代替できなければ、「特定の空港で物理的な不足が生じ、欠航や需要の破壊につながる可能性がある」とした。また、供給の75%を代替できたとしても、8月には同じ状況になる可能性があるという。

「その結果、夏の間の在庫を十分維持するためには当面、ヨーロッパ市場は他地域から追加の代替貨物を引き寄せるため、一層の努力を迫られる様子だ」と、IEAは述べた。

イギリス政府の報道官はBBCに対し、「人の移動を維持し、企業を支えるため、燃料供給業者や航空会社と連携している」、「イギリスの航空会社は、現時点で供給の混乱は見られないと明言している」と話した。

欧州委員会は今週初め、欧州連合(EU)では「燃料不足が起きていると示す証拠はない」との見解を示した一方で、「近い将来」に供給上の問題が生じる可能性があることを認めた。

欧州委の報道官は記者会見で、EU域内の製油所向け原油供給は「安定しており、現時点で追加の備蓄放出は必要ない」と述べた。

一方で、同委の石油とガスの調整グループが毎週会合を開いており、エネルギー対策については来週にも、ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が発表するとしている。

各国の航空会社は、通常は運航コストの20〜40%を占める燃料費の上昇に対処するため、緊急措置を取らざるを得なくなっている。

ヨーロッパの航空燃料の指標価格は、4月初めに1トン当たり1838ドル(約29万3000円)と、過去最高値を記録した。これは、イランでの戦争が始まる前の831ドルと比べて大幅な上昇だ。

業界団体のエアラインズUKは、イギリス向け航空燃料の供給に混乱は確認していないとする一方、燃料供給が途絶えた場合に航空業界を支援するために必要となる「重要な措置」について、政府と協議していると述べた。その中には、「規制負担の軽減を含め、消費者と貿易、そしてイギリスの競争力を守ること」が含まれるという。

空港の業界団体、国際空港評議会(ACI)は先週、欧州委宛ての書簡で、ホルムズ海峡が今後3週間以内に再開しなければ、大陸全体で航空燃料不足が起きる可能性があると警告した。

欧州の航空業界団体「エアラインズ・フォー・ヨーロッパ」もEUに対し、紛争に起因する燃料不足や空域閉鎖について、「異例の事情」として扱われるよう、旅客補償規則を明確にするよう求めている。これが認められれば、欠航が生じた場合でも、航空会社は多額の補償金を支払う必要がなくなる。

イギリスの格安航空イージージェットは、16日に発表した最新の取引状況の中で、中東での紛争が「短期的な燃料費と顧客需要をめぐる不確実性」を引き起こしていると述べ、紛争の影響で3月に2500万ポンド(約54億円)の追加燃料費が発生したと明らかにした。しかも、現在の紛争によるコスト上昇の前に、仕入れ価格を固定して航空燃料の75%超を確保していたにもかかわらず、これだけの追加費用が発生しているのだという。

KLMオランダ航空は16日、燃料費の上昇を理由に、今後1カ月間でヨーロッパ域内の160便を欠航すると発表。そのうえで、これはヨーロッパ域内の運航便の1%未満に相当するとし、航空燃料の不足は生じていないとも説明した。

エネルギー市場調査会社アーガス・メディアで欧州の航空燃料価格の責任者を務めるアマール・カーン氏は、たとえ近い将来に湾岸地域からの供給が再開されたとしても、夏の旅行需要のピークを迎えるより前に、不足が生じる可能性があるとみている。

「確実ではないが、それでもヨーロッパの一部地域では、ある程度の不足が起きる可能性が、ますます高まっている様子だ」と、カーン氏は述べた。

「もちろん英ヒースロー空港のような場所は、他の小規模な空港や需要拠点よりも優先される可能性が高い。そうだとしても、仮に供給が再開されたとしても、回復には5〜6週間かかるだろう」

(追加取材:オリヴァー・スミス記者)