米国とイランが停戦で合意、条件付きで2週間 ホルムズ海峡開放へ

アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日夜、自身のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」で、イランがホルムズ海峡の航行を認めれば、アメリカとイランの間で2週間の停戦が実現すると発表した。その後、イランの最高国家安全保障会議(SNSC)も声明で、アメリカとの合意を認め、詳細を「最終確定」させるため、最大15日以内に、パキスタンの首都イスラマバードで交渉を行うと明らかにした。
トランプ大統領はここ数日、米東部時間7日午後8時(日本時間8日午前9時)までにホルムズ海峡を開放しなければ、イランのインフラ施設などを攻撃すると警告していた。
7日の発表直前には、トゥルース・ソーシャルに「今夜、一つの文明全体が滅び、二度と復興することはないだろう」と脅す投稿をし、国内外から大きな批判を受けていた。
トランプ氏は7日夜の投稿で、暫定的な停戦に同意した理由について、「我々はすでに、すべての軍事目標を達成し、それを上回ったからだ」と説明。
また、「イランとの長期的な平和、そして中東の平和に関する決定的な合意について、我々は非常に前進している」とし、今回の発表に至ったとした。
トランプ氏はまた、イランが米・イスラエルに10項目からなる計画を送ってきたとし、「これまで争点となってきたさまざまな点のほぼすべてについて、アメリカとイランの間で合意に達しているが、2週間の期間を設けることで、この合意を最終化し、締結することが可能になる」と述べた。
また、「この長期にわたる問題が解決に近づいていることを、名誉に思う」と付け加えた。
イラン国営放送によると、10項目からなる計画の内容は以下のとおり。
・イラク、レバノン、イエメンにおける戦争の完全停止
・期限を設けない、イランに対する戦争の完全かつ恒久的な停止
・湾岸地域におけるすべての紛争の全面的な終結
・ホルムズ海峡の再開
・ホルムズ海峡における航行の自由と安全を確保するための協定および条件の確立
・イランに対する復興費用の補償金の全額支払い
・イランへの制裁解除の完全な履行
・アメリカが保有するイランの資金および凍結資産の解放
・イランがいかなる核兵器の保有も求めないことへの全面的な確約
・上記条件が承認され次第、すべての戦線で即時に停戦を発効すること
トランプ氏の投稿の後、イランのアッバス・アラグチ外相は、「イランに対する攻撃が停止されるのであれば」、イランは停戦に同意すると発表した。
また、「2週間にわたり、ホルムズ海峡を安全に通過することが可能になる」と述べ、これは「イラン軍との連携を通じ、技術的制約を十分に考慮したうえで」実施されると語った。
交渉の場となるパキスタンは、米・イスラエルとイランとの紛争をめぐり、かねて仲介役を務めてきた。
トランプ氏は、今回の条件付き停戦合意につながる協議を行ってきた相手の1人として、パキスタンのシェバズ・シャリフ首相の名を挙げ、「彼らは、今夜イランに向けて送られる破壊的な力を差し控えるよう、私に要請した」と記している。
シャリフ首相は、トランプ氏が当初設定していた期限が切れるわずか10分前に、停戦が「即時発効した」と発表した。
シャリフ首相は続けて、「両者は平和と安定の実現という目的を前進させるうえで、顕著な知恵と理解を示し、建設的な関与を維持してきた」と述べた。
そのうえで、「われわれは『イスラマバード協議』が持続可能な平和の実現に成功することを心から願っており、近く、さらに良い知らせを共有できることを期待している」と締めくくった。
米・イラン双方が勝利を宣言、イスラエルの立場は
イランとの停戦発表をめぐり、米ホワイトハウスは勝利を主張している。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、ソーシャルメディアに「これは、トランプ大統領と、わが国の驚異的な軍が成し遂げた、アメリカ合衆国の勝利だ」と投稿し、トランプ大統領が「ホルムズ海峡を再開させた」と付け加えた。
レヴィット報道官はまた、大統領が当初から「オペレーション・エピック・フューリー(壮絶な怒り)」は4~6週間の作戦になると述べていたと指摘し、アメリカは「38日間で中核となる軍事目標を達成し、さらにそれを上回った」と主張。
「わが軍の成功が最大限の交渉力を生み出し、トランプ大統領とそのチームが厳しい交渉に臨むことを可能にした。その結果、外交的解決と長期的な平和への道が開かれた」と続けた。
レヴィット報道官によると、ピート・ヘグセス国防長官と、統合参謀本部議長のダン・ケイン大将が、8日朝にも発言する予定だという。
一方イランの政権や国営メディアも、この停戦を自国の勝利だと主張している。SNSCが発表した声明は、イランがこの戦争でほぼすべての目標を達成し、敵は歴史的な敗北に直面しているとしている。
米首都ワシントンで取材中のカシャヤル・ジョネイディ特派員(BBCペルシャ語)は、イランはこの戦争の初期に最高指導者のアリ・ハメネイ師やイスラム革命防衛隊の幹部を殺害されており、体制の存亡がかかっていたと指摘。
そのため、アメリカとイスラエルを相手に30日以上にわたる戦争を生き延びたことで、イラン指導部は自らを勝者と見なしていると解説した。
トランプ氏の意思決定の過程に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がどの程度関与していたのかは不明。
パキスタンのシャリフ首相は、この停戦には、イスラエルが地上部隊を展開しているレバノンも含まれると述べている。
一方でイスラエル指導部は、イランが支援するレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラによる脅威が排除されるまで、レバノンから撤退しないとの立場を示してきた。
「文明を破壊」とトランプ氏、ヴァンス氏は核使用を示唆か
停戦合意の発表前、トランプ氏はトゥルース・ソーシャルへの投稿で、「今夜、一つの文明全体が滅び、二度と復興することはないだろう」と警告し、次のように書いた。
「私は、それが起きてほしくないが、おそらく起きるだろう。しかし、今や完全かつ全面的な体制転換が実現し、今までとは違う、より賢明で過激化していない考え方が主導するのであれば、もしかすると革命的に素晴らしい何かが起きるかもしれない。誰にも分からない」
「われわれは今夜、それを知ることになる。世界の長く複雑な歴史の中でも、最も重要な瞬間の一つだ。47年にわたる恐喝、腐敗、そして死が、ついに終わる。偉大なるイラン国民に神の祝福を!」
その後、J・D・ヴァンス副大統領はソーシャルメディアに、アメリカには「これまで使うと決めてこなかった手段が手元にある」ことを、イラン政権は理解しなければならないと投稿。「アメリカ合衆国大統領は、それらを使うかどうかを決めることができるし、イラン側が行動の方向を変えなければ、使う決断をするだろう」と語った。
ヴァンス氏の発言に対しては、アメリカが核兵器使用の可能性に言及したとの指摘が出ている。
ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、BBCが政府の立場について質問すると、ヴァンス氏の発言の「いかなる部分も、そのようなこと(核兵器使用)を意味していない」と声明で回答した。
声明には、「イラン政権には、アメリカ東部時間午後8時まで、この局面に応え、アメリカ合衆国と取引をまとめる時間が与えられている。どこまで事態が進んでいるのか、そして何をするのかを知っているのは、大統領ただ一人だ」とも記されていた。
トランプ氏の脅しを受け、イラン外務省のエスマイル・バガエイ報道官は、「文明国」の「論理」は「蛮力」に勝ると述べた。
同報道官はXで共有した声明の中で、「自らの歩む道の正しさに全面的な信念を持つ国家は、その権利と正当な利益を守るために、あらゆる能力と資源を動員するだろう」と付け加えた。
また、イランの一部当局者は、アメリカからの攻撃を抑止する目的で、発電所の周囲に「人間の鎖」を作るよう国民に促した。
イラン国営のファルス通信が共有し、BBCが検証した映像には、南西部ファルス州の「カゼルーン複合サイクル発電所の前の人間の鎖」とされるものが映っていた。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は他にも、北部カズビーン州のシャヒード・ラジャーイー発電所と、南西部フーゼスターン州のデズフールとアフワズにある橋で、同様の「人間の鎖」に参加する人々が撮影された映像を確認した。
一方、イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、イランを守るため「命をささげる」意思を示す登録者が1400万人に上ったと述べた。応募者は、指定された電話番号にショートメッセージを送ることで登録できるという。
米国内では「ジェノサイドの脅し」だと批判も
トランプ氏の発言後、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「社会のインフラを徹底的に破壊したり、民間人に意図的に苦痛を与えたりすることを正当化できるような軍事目的は存在しない」と、Xに投稿した。
また、ステファン・デュジャリク報道官は、グテーレス事務総長が「民間人全体、あるいは文明全体が、政治的・軍事的決定の結果を負わされる可能性を示唆する発言」に懸念を抱いていると述べた。ただし、トランプ氏への直接の言及はなかった。
キリスト教カトリック教会の教皇レオ14世も、記者団に対し、イラン国民に向けられた脅しは「容認できない」と話した。
初のアメリカ出身の教皇であるレオ14世は、米・イスラエルとイランの戦争を厳しく批判している。5日のイースター(復活祭)礼拝では、「戦争を巻き起こす力を持つ人」に対し、平和を選ぶよう呼びかけた。
トランプ氏の投稿を受け、アメリカ国内では主に民主党の政治家らから、合衆国憲法修正第25条の発動を求める声があがった。同条は、大統領が職務を遂行できなくなった場合、副大統領がその職務を引き継ぐことを可能にするもの。
民主党の議員数十人はトランプ氏について、「ジェノサイド(集団殺害)に相当する戦争犯罪を脅迫している」、「核(攻撃)のコード(暗号)を持たせるには危険すぎる」と非難している。
アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員はソーシャルメディアに、「これはジェノサイドの脅しであり、解任に値する。大統領の精神能力は崩壊しており、信頼できない」と投稿した。
また、下院の民主党幹部らは、共和党に対し、「ドナルド・トランプがこの国を第3次世界大戦に引きずり込む前に、中東におけるこの無謀な選択の戦争を終わらせるための採決」に加わるよう求めた。トランプ氏については、「完全に常軌を逸している」と形容した。
さらに、「文明全体を根絶やしにすると脅す発言は、良心を激しく揺さぶるものであり、議会による断固たる対応を必要とする」と述べた。
修正第25条第4節は、大統領が自ら職務遂行不能を宣言できない、あるいはそうしようとしない場合を想定している。また、副大統領と閣僚の過半数が、大統領が職務を果たせないと判断した場合、その旨を議会指導部に書面で通知することができる。大統領は、その判断に異議を唱えることもできる。
現時点で、トランプ政権の閣僚やヴァンス副大統領が、この手続きを検討している兆候はなく、現実性は低いとみられている。それでも、民主党側が発動を求める動きは止まっていない。
共和党内からも、トランプ氏の発言を非難する声があがった。下院軍事委員会と情報委員会に所属するオースティン・スコット議員は、BBCニュースに対し、トランプ氏の発言は戦闘停止にはほとんど寄与しないと語った。
トランプ支持者として政治的立場を築いた後、決別したマージョリー・テイラー・グリーン元下院議員も、今回の脅しを「正気の沙汰ではない」と非難し、大統領の解任を求めた。
グリーン氏はXに、「文明全体を殺すことはできない。これは邪悪であり、狂気だ」と書いた。
このほかタッカー・カールソン氏、アレックス・ジョーンズ氏、キャンディス・オーウェンズ氏、ジョー・ローガン氏など、著名な保守系メディア関係者も、次々とトランプ氏の発言を批判した。
トランプ政権のイランへの攻撃に抗議して国家テロ対策センターの所長を辞任したジョー・ケント氏は、トランプ氏が民間インフラを標的にすれば、アメリカの評判を危険にさらすことになると指摘した。
ケント氏はXへの投稿で、「トランプはイランを破壊で脅しているつもりかもしれないが、いま危険にさらされているのはアメリカだ」と述べた。
「もし彼がイラン文明の根絶を試みれば、アメリカはもはや世界の安定化勢力とは見なされず、混乱の主体とみなされるだろう。それは、世界最大の超大国としての地位を事実上終わらせることになる」
イスラエルとイラン、湾岸諸国への攻撃続く
トランプ氏の停戦発表から数分後、イスラエル軍は、イランからイスラエルに向けて発射されたミサイルを確認したと発表。国民向けにミサイル警報を携帯電話に送信した。
その直後、エルサレム全域でサイレンが鳴り響いた。
さらに約30分後、イスラエル国防軍(IDF)は、イランからイスラエルに向けて新たに発射されたミサイルを確認したと発表。エルサレムで再び爆発音が聞こえた。
そしてその数分後、今夜に入って3度目となる、さらに大きな爆発音がエルサレムで聞こえた。
湾岸地域のアメリカの同盟国に対する攻撃も、依然として続いている可能性がある。
アラブ首長国連邦(UAE)国防省は声明で、同国が「イランから飛来するミサイル攻撃やドローンへの対応を行っている」と明らかにした。
声明によると、防空システムがこれらのミサイルを迎撃しているという。
また、サウジアラビアは、首都リヤドを含む同国東部地域全域で、緊急警報が発令されたと発表した。
警報は「潜在的な危険」を警告しており、住民には避難するよう勧告している。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、7日には別の動きとして、アメリカが夜間に、イラン沖に位置するカーグ島で軍事目標に対する攻撃を実施した。この島には主要な石油ターミナルがあるが、匿名の当局者はCBSに対し、石油インフラは標的にしていないと語った。
イランのメヘル通信も、この攻撃について、「重要インフラに被害はなかった」と報じている。
また、イランでは鉄道橋への攻撃により2人が死亡し、列車の運行が停止されたとの報道が出ている。イスラエル軍はこれに先立ち、列車での移動は「命を危険にさらす」として、7日は列車を利用しないようイラン国民に警告していた。
イスラエルのネタニヤフ首相はその後、イスラエルがイランで使用されている鉄道や橋を攻撃したと述べた。
ホルムズ海峡の防衛決議案、中ロが拒否権
国連では7日、安全保障理事会が開かれた。湾岸諸国は、ホルムズ海峡の確保に向けた防衛的かつ協調的な取り組みを促す決議案を提出したが、ロシアと中国が拒否権を行使した。
採決では、11カ国が賛成した一方、パキスタンとコロンビアが棄権した。
この決議案は、数週間にわたる調整の過程で内容が緩和された。当初は、軍事力の行使を認める国連憲章第7章の下で提出されていたが、途中で第7章の適用を外し、「必要なすべての防衛的手段の使用を各国に認める」表現に変更され、最終的には、防衛的努力を強く奨励するという文言に落ち着いた。
安保理は、バーレーンのアブドルラティフ・ビン・ラシド・アル・ザイヤーニ外相が議長を務めた。
採決に先立って発言したアル・ザイヤーニ外相は、この決議案は新たな現実を作り出すものではなく、繰り返されてきたイランの敵対的行動のパターンに対する真剣な対応だと説明。こうした行動は終わらせなければならないと述べた。
また、重要な水路が圧力手段として武器化される事態に安保理が対応しなければ、世界に深刻な結果をもたらし、他の海峡や水路でも同様の事態が再現されかねず、世界はジャングルに変わってしまうと警告した。
中国は、開戦以降もホルムズ海峡の通航を維持できている国の一つに含まれている。一方ロシアは、海峡閉鎖への対応措置として石油制裁が緩和されれば、利益を得る可能性がある。











