トランプ氏、ホルムズ海峡封鎖と発表 イラン側は「脅しはイラン人に効果ない」と反発

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は12日、パキスタンで行われたイランとの協議で合意が得られなかったことを受け、「米海軍は、ホルムズ海峡に出たり入ったりしようとする全ての船を『封鎖する』作業に着手する」と、ソーシャルメディアに投稿した。米中央軍はこれを受け、13日から「イランの港を出入りするあらゆる海上交通の封鎖を始める」と発表した、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は12日、「ホルムズ海峡に近づく軍艦は停戦合意違反とみなし、厳しく対応する」と発表。イラン交渉団を率いたモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は声明で、トランプ氏の発言について「そのような脅しはイラン人には何の効果もない」「イランは脅しに屈したりしない」と反発した。
こうした状況の中、アジア時間13日早朝の取引で、指標となる北海ブレント原油の先物価格は1バレル=100ドルを再び突破し、8.5%上昇し102ドル台をつけた。同様にアメリカの指標ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)も、12日の米ニューヨーク商業取引所で、前営業日の終値より9%超高い1バレル=105.34ドルをつけた。

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「違法な通行料を払っても安全はない」とトランプ氏
トランプ米大統領は自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」、ホルムズ海峡に出入りしようとする「全ての船舶を封鎖し始める」と書いた。
トランプ氏は、「イランに通行料を支払ったすべての船舶を、公海上で捜索し、阻止するよう海軍に指示した」として、アメリカ海軍が「イランが海峡に敷設した機雷を破壊し始める」と述べた。
「違法な通行料を支払う者に、安全な航行はない」、「我々に発砲する、あるいは平和的な船舶に発砲するイラン人は全て、地獄まで吹き飛ばす」(太文字は原文では全て大文字)」として、「まもなく封鎖を開始する」と表明した。
トランプ氏はさらに、「イランはホルムズ海峡を開放すると約束したが、それを承知のうえで果たさなかった」、「このことは世界中の多くの人と国に不安、混乱、苦痛をもたらした」と書き、「約束した通り、この国際水路をすぐさま開放するプロセスを始めたほうがいい」と述べた。
J・D・ヴァンス副大統領がアメリカ交渉団を率いたパキスタン・イスラマバードでの交渉については、「完全な報告を受けた」としたうえで、パキスタンのシャバーズ・シャリフ首相と関係者の努力をたたえた。
「20時間近い」交渉を経て「大事なのはただ一つ、イランが核への野心を放棄しようとしない、それだけだ」とも強調した。
「合意した内容は、軍事作戦を最後まで続けるよりはましだという面もあるがこれほど不安定で、難しく、予測不能な相手が、核の力を持つことを認めるのに比べれば、(合意内容の成果など)どれもどうでもいい」とも書いた。

トランプ氏の発表を受けて米中央軍は、「米東部時間13日午前10時、イランの港湾または沿岸地域に出入りする、すべての国の船舶に対して封鎖を開始する」と発表した。
中央軍は続けて、「アラビア湾およびオマーン湾にあるすべてのイランの港を含め、イランの港湾および沿岸地域に出入りする、すべての国の船舶に対して、封鎖を公平に実施する」と説明した上で、「イラン以外の港に向かう、またはそこから来る船舶がホルムズ海峡を通過する航行の自由を妨げない」としている。
トランプ氏は一連の投稿の後、米FOXニュースに対し、北大西洋条約機構(NATO)がホルムズ海峡での「撤去」を支援すると申し出たと発言。これまで「NATOに非常に失望していた」が、「今になって参加従っていて、海峡で手伝いたいそうだ」と述べた。
これについてイギリスの政府報道官は、海峡は「通行料の対象となってはならない」と述べ、イギリス政府は「航行の自由を守るための連合」を構築していると話した。
報道官は、「私たちは引き続き、航行の自由とホルムズ海峡の開放を支持している。これは世界経済と国内の生活費を支るために、緊急に必要だ」として、「私たちはフランスやほかのパートナーと緊急に協力し、航行の自由を守るための幅広い連合を構築している」と述べた。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、トランプ大統領がホルムズ海峡封鎖に加え、イランへの空爆再開を検討していると、匿名のアメリカ政府当局者の話として伝えた。
BBCがこの報道について尋ねると、ホワイトハウスのオリヴィア・ウェールズ報道官は「大統領はすでにホルムズ海峡の海上封鎖を命じ、イランによる恐喝を終わらせた。さらに、それ以外のあらゆる選択肢を賢明にも排除していない。トランプ大統領が次に何をするか自分は知っていると、ウォール・ストリート・ジャーナルに話している人物がいるとするなら、それは純粋な憶測にすぎない」と答えた。
「イラン人には効果はない」
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)の海軍は、ホルムズ海峡に接近する全ての軍艦を停戦違反と見なし、「厳しく対処する」と表明した。
IRGC報道部は海軍の見解としてイラン・メディアに声明を載せ、「敵」を名指ししないながらも、「一部の敵対的な当局者による虚偽の主張とは異なり」、ホルムズ海峡はイランの「特定の規則に従った知的な管理と統制の下で」、非軍事船舶の「無害通航」に対して開かれていると主張した。
イスラマバードでイラン代表団を率いたモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は、ソーシャルメディア「X」への投稿でトランプ氏の決定を嘲笑した。
議長は、米ホワイトハウス周辺のガソリンスタンドの位置と石油価格を示す地図のスクリーンショットと共に、「今のスタンドでの値段を楽しむといい。いわゆる『封鎖』によって間もなくそちらは、4~5ドルのガソリンを懐かしく思うことになる」と書いた。

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これに先立ち、ガリバフ議長はイラン帰国後に声明を発表し、トランプ氏の「封鎖」発言について、「そのような脅しはイラン人には何の効果もない」と述べ、イランは「脅されて降伏したりしない」と主張した。
イラン・メディアによると、ガリバフ議長はトランプ氏の発表に対し、「そちらが戦うなら我々も戦う。そちらが論理的にやってくるなら、我々も論理で応じる」と述べ、「我々はどのような脅しにも屈しない。もし再び我々の決意を試すなら、相手にいっそう大きな教訓を与えることになる」と主張したという。
議長はさらに、イラン政府は最初から「アメリカを信用していない」と言い続けてきたと指摘。交渉の最中に攻撃してくるという対応を1年足らずの間に2度もしたのだから、アメリカはイランの信頼に値すると示さなくてはならないと強調した。
今年2月28日に始まった戦争と、昨年6月の12日間の戦争はいずれも、イランとアメリカが長年議論されてきたイランの核開発計画をめぐり協議していた最中に始まった。
ガリバフ議長と共にイスラマバードの交渉に臨んだイランのアッバス・アラグチ外相は、イラン政府は協議で「戦争を終わらせるため、誠意をもって」アメリカに向き合ったと、ソーシャルメディアに書いた。
しかし、「『イスラマバード覚書』まであとわずかというところで私たちは、最大限主義、変わり続ける目標、そして封鎖に直面した」として、外相は「何の学びも得られなかった。善意は善意を生み、敵意は敵意を生む」と結んだ。
イラン国営放送によると、マスード・ペゼシュキアン大統領は、トランプ政権が国際法を順守するなら、アメリカとの合意は「手の届かないものではない」と述べたという。
イラン国営放送は、ペゼシュキアン氏とロシアのウラジーミル・プーチン大統領との電話会談について要旨を伝える中で、この発言を通信アプリ「テレグラム」で紹介した。両大統領の電話会談は、イスラマバードでのアメリカとの協議の後に行われたという。
ペゼシュキアン氏はその後、「X」で、「アメリカ政府が全体主義を放棄し、イラン国民の権利を尊重するなら、(アメリカと)合意に達する道は必ず見つかるだろう」とも書いている。
封鎖は国際法違反の可能性
3人の法曹関係者はBBCに対し、アメリカ軍によるホルムズ海峡封鎖は海洋に関する国際法に違反するかもしれないと話した。専門家の1人はさらに、軍事力による封鎖が、現在の停戦合意に違反する可能性についても指摘している。
船舶追跡サイト「マリントラフィック」のデータによると、トランプ大統領がホルムズ海峡の封鎖を発表して以降、イラン船籍の船舶3隻が同海峡を通過し、アラビア海に入った。
停戦が7日夜に発表されて以降、少なくとも60隻の船舶が同海峡を通過しており、1日平均では10隻となる。これは停戦前に比べると大幅な増加だが、戦争前の水準にはまだ遠く及ばない。多国籍の合同海事情報センター(JMIC)によると、戦前は1日あたりおよそ138隻が同海峡を通過していた。
【解説】封鎖の影響は限定的か
レイチェル・クラン ビジネス記者
トランプ大統領によるホルムズ海峡封鎖の脅しについて、海事アナリストのラース・イェンセン氏は、今も海峡を航行しているごく少数の船舶にしか影響しないと話す。
「もしアメリカが実際に実行しても、止まるのはごくわずかな船の流れにすぎない。全体で見れば、実質的に何も変わらない」という。イェンセン氏は、デンマークの海運コンサルティング会社ヴェスプッチ・マリタイムの最高経営責任者。
イェンセン氏は、イランに通行料を支払った船舶に安全な通航を認めないというトランプの脅しについても、影響は小さいと話す。イランに通行料を払った企業は、すでにイラン政権に資金を支払ったとして制裁の対象になっているからだという。
「まず、通過する船が非常に少ない。通過する船の内、通行料を支払う船はさらに少ない。そして支払った船は、すでにアメリカの制裁対象になる」とイェンセン氏は言う。
多くの海運会社は、暫定的な停戦合意が成立し維持されるかどうかを見極めるため、当面は様子見を続けるだろうとイェンセン氏は指摘。停戦合意が維持されれば、輸送は徐々に再開される可能性があるという。
海峡を再び安全に通過できると判断するには何が必要かについて、海運各社は分かっていないというのが、正直なところだろうとも、イェンセン氏は述べた。
「結局のところ、すべては信用にかかっている。どのようなものであれ、アメリカとイランの合意が一定期間の間、守られるという信用だ。それは主観的な感覚で、これだと説明できる明確で具体的な物は何もない」












