【解説】 マムダニNY市長、就任から100日 成果と課題

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マデリン・ハルパート記者
4月12日、米ニューヨーク市内の満員のコンサート会場で、過去1世紀余りで最年少の同市市長となったゾーラン・マムダニ氏が演壇に立ち、就任から最初の100日間の実績を強調した。
会場となったのはクイーンズにある元工場のノックダウン・センターで、数千人が集まり、なかには「穴ぼこ政治」や「すべての人に保育を」と書かれたプラカードを掲げる人もいた。
「ニューヨーク市にとって取り組むには大きすぎる問題は何もない」と、マムダニ市長は聴衆に語った。「そして過去14週間で、取り組むには小さすぎる課題も存在しないことを、私たちは証明してきた」。
マムダニ市長は、保育分野で12億ドル(約1910億円)を確保し、10万カ所の道路の穴を修繕したなどと、複数の成果を主張した。一方で、大胆な公約で掲げた項目のいくつかは、いまだ達成されていない。
米ハーヴァード大学ケネディ行政大学院のジャスティン・デ・ベネディクティス=ケスナー教授(公共政策)は、「市長は、最も支持を築きやすいと考える事柄を選んでいる。初めに分断を招きかねない問題に着手するのではなく、幅広い支持基盤のある論点を見つけようとしている」と述べた。
ドナルド・トランプ大統領との不安定な関係への対処から、市内バスの効率化・無償化に至るまで、マムダニ氏の主要な四つの選挙公約について、どんな段階にあるのかを見ていく。また、これから対応を迫られる課題も指摘する。
1. トランプ氏とうまくやっていく

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マムダニ氏が初当選するまでの数カ月間、自らを民主社会主義者と称する同氏と、共和党のトランプ大統領は、非難の応酬を繰り返していた。トランプ氏はこの新進気鋭の政治家を「共産主義者」と呼び、マムダニ氏は集会の聴衆に対し、トランプ氏に屈することはないと約束していた。
しかしマムダニ氏が就任して以降、両者の関係は、それほど対立的なものではないことが明らかになっている。
両氏は数回にわたり会談し、トランプ氏はマムダニ氏を「応援する」と語った。両者は、全米で最も物価が高い都市における生活費危機について意見を交わし、写真撮影では並んで笑顔を見せた。
米コロンビア大学国際公共政策大学院のリンカーン・ミッチェル氏は、トランプ氏が時にマムダニ氏に「魅了されているように見える」と述べた。
「マムダニ氏が成し遂げたのは、トランプ氏から直接の怒りを買わず、同時に屈しもしないという、針の穴に糸を通すようなことだ」
意外な2人のこうした友好関係のためか、マムダニ氏は、すでに赤字運営となっているニューヨーク市への連邦資金拠出を停止するというトランプ氏の脅しが実行される事態を回避してきた。
トランプ氏はまた、今年1月にミネソタ州ミネアポリスでに行われ、連邦当局と地元指導部との対立が激化した移民取り締まりと同様の措置を、ニューヨークではいまだに開始していない。
2. 保育サービスを無償にする
マムダニ氏の最大の選挙公約の一つで、生活費対策の中核に据えられていたのが、全市民を対象とした保育サービスの提供だった。
費用のかかる目標である保育無償化は、まだ現実にはなっていない。しかし、ニューヨーク州のキャシー・ホークル知事は、州として12億ドルを投入すると約束した。その一部は、ニューヨーク市のカナーシー、ブラウンズヴィル、オゾン・パークなど、いくつかの低所得地域で2026年秋までに、2歳児向けに無償の保育枠2000人分を提供するために使われる予定だ。
この取り組みは、2027年秋までに対象を1万2000人に拡大し、4年以内に「全対象者への適用」を達成することを目標としている。
ホークル知事は、このプログラムの最初の2年間について、州が全額を拠出する考えを示しているが、その後の資金確保については不透明だ。
3. 記録的な大吹雪に対応する

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マムダニ市長の就任最初の2カ月間に、米最大都市のニューヨークは、近年で最も深刻な大雪に2度も見舞われた。
1月25日から、ブロンクスでは約34センチの積雪を記録し、全ての行政区の中で最多となった。
続いて2月23日には、別の吹雪が同市を襲い、セントラルパークでは約51センチの積雪が観測された。
最初の吹雪とそれに続く寒波では少なくとも18人が死亡。マムダニ市長は、対応をめぐって批判に直面した。
2月には、厳しい気象条件の中でさらなる措置を取った。ホテルの客室を解放し、1400人をホームレス向けシェルターに収容し、150人の支援スタッフを路上に派遣した。
1月の大雪の際には、数千人の清掃作業員が通りの除雪に当たり、8カ所の融雪施設で1万トン以上の雪を溶かしたと、マムダニ氏は述べた。
4. 市営の食料品店を開く
この日の集会でマムダニ氏は、生活費対策のもう一つの柱としている、市が所有・運営する食料品店の開設を、任期1期目の終了までにイースト・ハーレムで実現する計画を発表した。市長は、計5店舗を開設する考えだと述べた。
店舗は、1936年に当時のニューヨーク市長フィオレロ・ラガーディア氏が設立した市場「ラ・マルケータ」に設けるという。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、事業費は3000万ドルに上る見通しだ。
ニューヨーク市はすでに、民間の食料品店に対して低い賃料で物件を貸し出したり、運営費を補助したりすることで、より安価な食料へのアクセス拡大を図っている。
待ち受ける厳しい課題

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マムダニ氏には、選挙期間中に強調してきた数多くの目標がなお残されている。比較的達成しやすいものもあれば、そうでないものもある。
コロンビア大学のミッチェル氏は、「魔法のつえを振れば、壮大な公約がすぐに実現すると考えていた人がいたとすれば、それは最初からあり得ない話だ」と語った。
家賃の引き下げや、費用のかかる計画の財源確保を目的とした増税などは、まだ進展がない。
不動産会社コーコラン・グループの報告によると、2026年3月には、家賃の中央値がマンハッタンで月5000ドル(約79万5000円)、ブルックリンで月4150ドルまで上昇した。マムダニ氏は、家賃値上げ率の上限を設定している「レント・スタビライズド(家賃安定型)物件」に住む約200万人について、家賃の値上げを凍結すると述べてきた。この政策を決定する権限は市長にはないが、マムダニ氏は決定権を握る市の家賃指針委員9人のうち、6人を任命している。委員会は、家主や入居者らの意見を聞いたうえで投票を行い、6月に判断を下す見通しだ。
ハーヴァード大学のデ・ベネディクティス=ケスナー氏は、この手続きによって、全面的な凍結ではなく、何らかの妥協案が導かれる可能性があると指摘した。
「政治や統治では、すべてがトレードオフだ」と同氏は述べ、家主団体などの意見を聞いた結果、マムダニ氏の政策が支持者らが思い描いていたものとは「やや異なる形」になるかもしれないと付け加えた。
一方、犯罪ではない緊急事案に警察ではなくソーシャルワーカーを対応させる、新たな「地域安全局」の設置というマムダニ氏の構想も、実現は想定以上に困難なことが明らかになっている。当初は11億ドルの予算を持つ独立した機関を構想していたが、現時点では職員2人だけの市長直属の地域安全担当室にとどまっている。
選挙運動のもう一つの柱だった、より効率的な無償の市バスについても、これまでのところ試験的な事業に限られているようだ。
マムダニ氏は以前から、富裕層への増税によって最大90億ドルを政策財源として確保するほか、法人税率を7.25%から11.5%に引き上げる考えを示してきた。
しかし、税制変更には州の支持が必要となる。今年の中間選挙での再選を目指し、独自の政治判断を行っているホークル知事は、増税を避けたい意向を示している。
ミッチェル氏は、「それが最大の課題になる」と述べ、「もしホークル氏が(増税)しなければ、マムダニ氏にできることは大きく制限される」と語った。








