【解説】 米国とイランは和平に近づいているのか、再び戦争へ向かっているのか

画像提供, Reuters
ポール・アダムス外交担当編集委員
「首の皮一枚」の停戦、「進展を見せている」外交、「満足していない」大統領、湾岸地域一帯に響き渡る爆発音――。
混乱状態にある現在のアメリカとイラン関係から、何が読み取れるのか。和平は近いのか。それとも再び戦争に向かっているのか。
米ホワイトハウスは最新の発表で、双方の交渉団がさらなる協議を可能にするため、停戦を60日間延長させる枠組みで合意したと説明した。ただ、ドナルド・トランプ米大統領の承認がまだ必要だとした。イランはこれが正しいのか明らかにしていない。
停戦は4月8日に発効。その前の活発な戦闘期間よりも大幅に長く続いている。だがこの1週間、試練にさらされてきた。
米中央軍(CENTCOM)は、イラン南部の港湾都市バンダル・アッバスにある「地上管制施設」などを空爆したと発表。これに対しイランも、「攻撃が見過ごされることはない」などと警告した。
その後、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は、米空軍基地を攻撃したと発表。どの基地なのかは明かさなかった。のちに米中央軍は、複数の米軍基地があるクウェートの上空で弾道ミサイルが迎撃されたと説明した。
米中央軍はこの攻撃を、イラン側の表現になぞらえ、「甚だしい停戦違反」だと呼んだ。
事態は不吉な様相を呈している。だが、紛争の最初の5週間半の激しい交戦状態に比べればかなりましだ。当時、アメリカとイスラエルは、イラン各地を標的に数千回の攻撃を実施。これに対しイランは、米軍基地や湾岸諸国、イスラエルに向け、ドローンや弾道ミサイルを次々発射した。
アメリカは28日、「ホルムズ海峡周辺で脅威となっていた」イランのドローン5機を撃墜したと発表した。海上輸送が、民間か軍用かを問わず、改めて焦点となっていることを示した。
ただ、どちらの側も、今週の報復合戦を全面戦争への回帰と考えているようにはみえない。
「覚書」をめぐるやりとり
この間も裏では、困難を極める外交交渉が、多くの関係者によって進められてきた。
交渉の様子を垣間見ることもあるが、それは断片的で、ほんの一瞬だ。
イランの国営メディアは27日、14項目の「了解覚書」の非公式草案の一部だとする内容を報じた。
それには、イランが望むすべてが含まれていた。イランの港湾を出入りする船舶を対象としたアメリカの海上封鎖の解除、「イラン周辺」からの米軍の撤退、ホルムズ海峡での非軍事的な航行の再開、イランとオマーンによる同海峡での船舶の管理と航路の指定――などだ。
注目すべきは、この報道にはイラン側の譲歩、なかでも極めて重要な核問題に関するものが、一切含まれていなかったことだ。
ホワイトハウスは短い声明を出し、この草案とされるものは「完全なでっち上げ」だとした。トランプ氏はその後、テレビカメラが入ったホワイトハウスでの閣議で、合意案にはまだ満足していないと述べた。
トランプ氏はまた、イランが「私たちに提供すべきものを提供し始めている」と発言。詳しくは述べず、イランが合意を順守しなければ戦争に戻ることになるとの警告を繰り返した。
そして、ピート・ヘグセス国防長官の方を向きながら、「もし(イランが)そうしないなら、私の左にいる男が(イランと)片を付けるだろう」と述べた。
いら立ちもうかがわせた。イランとオマーンがホルムズ海峡を通る船舶の航行を管理しようとしているとの報道について問われると、トランプ氏は、アメリカと長年同盟関係にある国に対し、次のように厳しい警告を発した。
「オマーンは他の国々と同じように振る舞うことになる。さもなければ、私たちは(オマーンを)吹き飛ばさなければならない」
こうしたなか、米財務省は27日、ホルムズ海峡の航行管理を目的にイランが新設した「ペルシャ湾海峡庁」に制裁を発動した。
同省の外国資産管理局(OFAC)はイランの計画を、「イランのイスラム革命防衛隊が、国の支援を受けたテロ活動を金銭化する新たな試み」だとした。
双方にかかる圧力
いつものことだが、トランプ氏は戦争が計画通りに進んでいると思わせようと全力を尽くしていた。原油市場のさらなる高騰や、11月の中間選挙での政治的痛手を避けるため、早急に合意を結ぶ必要があるとの指摘は一蹴した。
しかし、トランプ氏が窮地に立たされているのは間違いない。
満足のいく合意は、手が届きそうで届かないままとなっている。そして、与党・共和党の一部の議員や、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、トランプ氏が戦争に戻り、仕事を完遂するのを望んでいる。
イランでも同様の圧力はみられる。最も強硬な立場の人々は、イランは屈服しないことを証明したと主張し、最大限の成果を求めている。
パキスタンが主導する外交努力は、極めて複雑になっている。
アメリカとイランの間にある問題は根深い。イランの核開発計画、ホルムズ海峡の将来の管理、制裁の解除、資産の凍結解除などだ。
当面の目標である覚書の合意も、いまだ実現していない。この覚書は、戦争を終結させ、その後の複雑な外交交渉に向けた行程を定めるものだ。
マルコ・ルビオ米国務長官は27日、今後数時間から数日のうちに進展が可能か明らかになるだろうと述べた。
イランもアメリカも、ともに国内で圧力に直面し、湾岸地域の雰囲気が過熱気味であることから、戦争に戻ることを望んでいるようには見えない。
目に見える状況とは裏腹に、停戦は開始から7週間以上がたった今も、依然として維持されている。











