イスラエル人入植者がパレスチナ人家族を包囲、ヨルダン川西岸地区

動画説明, パレスチナ人の住宅を包囲、飢えさせて追い出す……イスラエル人入植者の新しい手法
Published
この記事は約 7 分で読めます

ヨランド・ネル中東特派員

イスラエル占領下のパレスチナ・ヨルダン川西岸地区で、イスラエル人入植者らがパレスチナ人家族2世帯の自宅を包囲している。包囲は9日から続いており、家族側は食料が底をつき始めていると訴えている。事態を受け、人権団体が当局に介入を求めている。

複数の情報によると、イスラエルの治安部隊は12日、過激派入植者グループとの衝突の後、ナブルス近郊のクシュラ村にあるユダヤ人入植地から撤退したが、依然として入植者十数人が現場に残っているという。

パレスチナ人の家主たちが当初、イスラエル軍に通報した後、現場に最初に到着した兵士らが入植者らと共に祈りを捧げる様子が撮影された。

アブ・リディ家とハッサン家は、水道と電気の供給が停止され、食料の備蓄も底をつきかけたため、ソーシャルメディアで支援を求める投稿を続けている。

クスラ村にいる入植者らが、具体的に何を求めているのかは明らかになっていない。過去には、入植者らがパレスチナ人を家から追い出し、財産を奪ったことがある。

入植者らは、地域からパレスチナ人住民を一掃すると公言している。

この間、国連の安全保障理事会では11日、高官の一人が「ヨルダン川西岸地区は限界点に達している」と述べた。

入植地は、国際法で違法とされている。入植者らが置く前哨基地は、イスラエル政府の正式な許可なく設置されている。

パレスチナ側の監視カメラの映像には9日夜、入植者らがアブ・リディ家の家の外にある壁を取り壊し、その石を使って道路を封鎖する様子が映っている。

この影響で少女2人を含む7人が自宅から出られなくなり、近隣のパレスチナ人もこの一家と連絡を取ることができなかった。一家はヨルダン川西岸地区の通称「B地区」に住んでいる。同地区は、行政をパレスチナ自治政府が、治安をイスラエルがそれぞれ管理している。

クサイ・アブ・リディ氏はフェイスブックへの投稿で、「我々は完全に孤立しているため、状況は特に危機的だ」と述べた。

「私たちは自分たちの家、自分たちの土地に住んでおり、安全かつ尊厳をもって暮らす権利以外、何も求めていない」とも、クサイ氏は強調した。

一方、アイシャ・ハッサン氏はロイター通信に対し、入植者らが家の門を壊そうとし、「石を投げつけ、罵倒してきた」と言い、家族が「恐怖で死にそうで、非常に怯えている」と話した。

10日には、イスラエルの左派紙「ハアレツ」のイスラエル人記者がパレスチナ人居住地へ向かおうとするのを、イスラエル人入植者らが阻止した。記者らによると、現場にいたイスラエル兵は、記者らの車が2時間にわたって足止めされた際、助けるのを拒んだという。記者らは、その地域は軍事立ち入り禁止区域だと告げられたが、入植者らにはその命令は適用されなかった。

イスラエルの人権団体イェシュ・ディンは11日、イスラエル軍中央司令部の司令官に対し、包囲された住民を保護し、入植者の前哨基地を撤去し、入植者に責任を負わせるよう緊急に訴えた。

同日夜遅くには、パレスチナ側の救急車がこの家族のもとに到着し、食料を届けたほか、治療のために子供1人を移送した。

これとほぼ同じ時間にイスラエル国防軍(IDF)は、新しい前哨基地の設置を非難する声明を発表した。声明は、パレスチナ人の住居に侵入し占拠することは「違法であり、非難されるべき、容認できない行為」だと述べている。

12日早朝には、中央軍のアヴィ・ブルース少将をはじめとする司令官らが現場を訪問し、住民と面会し、「深刻な懸念」を表明したと伝えられている。

その後、BBCが確認したパレスチナ側の監視カメラ映像には、イスラエル兵および国境警備隊と、大勢の入植者との衝突が映っていた。治安部隊は催涙ガスやスタン・グレネード(せん光発音筒)を使用した。

乾燥した丘の上に、壁に囲まれた家が建っている

画像提供, Reuters

画像説明, この家では9日以来、住民が包囲され、出られなくなっている(12日、ヨルダン川西岸地区)

別の映像では、入植者らが宿泊していた天幕をイスラエル軍が押収したが、、その他の装備はそのまま残していたようにみえる。

IDFはその後、「国境警備隊はテントを撤去し、そこに滞在していた民間人の撤退を進めている。事案は進行中だ」と発表した。

また、「数日前に現場で目撃された治安部隊員に対し、懲戒処分を下すことを決定した」とした。

パレスチナ人のアブデル・アジム・ワディ村長はBBCに対し、地元住民は「クスラ村を標的とした明確かつ継続的な攻撃パターン」を目撃していると話した。先月には、完成したばかりのモスク(イスラム教の礼拝施設)が放火された。近くにはヘブライ語の落書きがスプレーで描かれていたという。

今回の襲撃は、パレスチナのタル村で起きた別の事件に端を発している。イスラエル人入植者らがタルを襲撃したことで事態はエスカレートし、これまでにパレスチナ人4人とイスラエル兵2人の計6人が死亡した。イスラエル兵のうち1人は、近隣のイスラエル人入植地の治安調整役を務めていた。

7月には、入植者らがクシュラ近郊のジャルード村にあるパレスチナ人の家を2週間以上にわたって包囲した。家主が家から逃げたため、入植者らはその土地を占拠して現在もそこに住み続けている。

国連の国連のラミズ・アラクバロフ副特別調整官(中東和平プロセス担当)は11日、安保理への概要説明で、「入植者らによる暴力は前例のないレベルに達している」と述べた。

アラクバロフ氏は、「身の引き締まるような人的被害」について報告し、特にナブルス県が最近、暴力によって大きな打撃を受けていることに言及した。

国連の統計によると、ヨルダン川西岸地区では今年、イスラエル軍または入植者によって、パレスチナ人76人が殺害された。うちうち子どもは18人だった。一方、パレスチナ人との衝突や、パレスチナ人による車両突入攻撃とみられる事件で、イスラエル人3人が死亡している。うち民間人は1人。

国連によると、2023年1月以降、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人コミュニティー127カ所で、住民の完全または部分的な避難が発生している。そのうち47カ所では住民が完全な避難を強いられ、6390人以上のパレスチナ人が影響を受けている。

また、2026年には約3800人のパレスチナ人が、入植者による暴力、家屋の破壊、立ち退きによって避難を余儀なくされた。そのほぼ半数が子どもだった。

一方、安保理で演説したイスラエルのダニー・ダノン国連大使は、入植地が和平の障害となっているという考えを否定した。同大使は、イスラエルには聖書、歴史、そして法律に基づく土地に対する権利があるため、入植地は存続し、拡大し続けると主張した。

また安保理に対し、「我々はどこにも行かないという、その単純な真実を理解する必要がある」と強調した。