米軍、イラン南部を空爆 合意は「目前ではない」とイランが説明後

画像提供, Getty Images
米中央軍は25日、イラン南部で空爆を実施したと発表した。ミサイル基地や機雷敷設の関係する艦船を標的にしたものだという。これより前には、イラン外務省は戦闘終結に向けたアメリカとの協議について、一定の進展はしているものの、合意は「目前ではない」と述べていた。
米中央軍は声明で、空爆は「自衛」の措置であり、「イラン軍による脅威から私たちの兵を守る」のが目的だとした。
ティム・ホーキンス報道官は、米軍は「継続中の停戦について自制を保ちつつ、自分たちの部隊の防衛を続けている」とした。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、ホーキンス報道官は空爆について、ホルムズ海峡に面したイラン南部の港湾都市で、海軍の基地があるバンダル・アッバスに近い地域が対象だと説明した。
イランの国営メディアは、バンダル・アッバスで爆発音が聞こえ、現地当局が調査していると報じた。
イランは今回の空爆にまだ反応を示していない。アメリカとイランの間で模索されている和平合意に、この空爆がどう影響するかは不明な状況となっている。
アメリカのドナルド・トランプ大統領は先週末、双方が合意に近づいていると示唆。しかしその後、自国の交渉団に対し、合意を「急がないよう」指示したと明らかにした。
同国のマルコ・ルビオ国務長官は、25日の内に合意に達する可能性があると述べていた。
これに対し、イラン外務省のイスマイル・バガイ報道官は25日、「協議中の問題の大部分について、結論に達したというのは正しい」と説明。「だからといって、これは合意の署名が目前に迫っていることを意味する、などとは誰も言えない」と述べた。
報道によると、両国が協議している「了解覚書」には、停戦の60日間延長、ホルムズ海峡の再開、イランの核開発計画をめぐる交渉の継続――が含まれているとされる。
ルビオ国務長官は25日、訪問先のインドで記者団に向かい、「昨晩、何らかのニュースがあるかもしれないと思っていた。今日なのかもしれない」と発言。「深読みはし過ぎないほうがいい」、「イランからの返答には少し時間がかかる」と述べた。
こうしたなか、BBCが提携する米CBSニュースは、イランの最高指導者モジタバ・ハメネイ師が非公表の場所で身を潜めていることから、彼の使節団と連絡を取るのが難しく、交渉のペースに遅れが出ているとの米情報当局の見方を伝えた。ハメネイ師は、今回の戦争初日(2月28日)のイスラエルによる攻撃で、父であり前最高指導者だったアリ・ハメネイ師を失い、自らも負傷したとされる。
米メディアによると、検討されている合意案は最終的な解決策ではなく、対イラン制裁や資金凍結の解除に関するイランの要求や、イランの核開発計画の抑制に関するアメリカの要求など、最も難しい問題は今後の交渉に委ねられることになる。
戦争が始まった時点で、イランは純度60%まで濃縮されたウランを約440キロ保有していたとみられている。この純度は、核爆弾の製造を理論上可能にする兵器級の純度90%まで、あと少しの濃縮で達するレベルとされる。
トランプ氏は25日夜、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、濃縮ウランは「直ちに」アメリカに引き渡されるか、「なるべくなら、イラン・イスラム共和国との連携・調整の下で、適所で破壊される」かのどちらかだとした。
双方による協議の進展について、高官らが控えめな表現にとどめるなか、ロイター通信は、イランの首席交渉官と外相が、アメリカとの合意の可能性についてカタールの首相と協議するため、ドーハを訪れたと報じた。
合意しても効果はしばらく先との見方も
アメリカでは、現在の合意案をめぐり、与党・共和党の中で意見が割れている。一部の議員らは、イランに甘すぎると公に批判している。
テッド・クルーズ上院議員は23日、トランプ政権の一部から聞こえてくるイランとの「取引」の内容が本当なら、「破滅的な過ち」になると。主張。上院軍事委員会のロジャー・ウィッカー委員長は、停戦を60日間延長すれば「エピック・フューリー(壮絶な怒り)作戦で達成したすべてが無駄になる!」とソーシャルメディアに書いた。
トランプ氏と盟友関係にあるリンジー・グレアム上院議員も当初、イランが中東で支配的な勢力だとみなされることになる合意には批判的な姿勢を示し、「そもそもなぜ戦争が始まったのか、疑問に思わざるを得ない」と投稿していたが、25日には、イランとの戦闘終結合意の一環として、イスラエルと国交正常化する「アブラハム合意」にサウジアラビアなどが加わることを求めたトランプ大統領の提案を「ひたすら素晴らしい」と絶賛した。
トランプ氏は、自分を批判する人たちを「負け犬」と一蹴。「イランとの合意は、素晴らしく有意義なものになるか、成立しないかのどちらかだ」と述べた。
合意をめぐって最良の展開になったとしても、その効果がすぐに現れる可能性は低い。
デンマークの海運コンサルティング会社ヴェスプッチ・マリタイムの最高経営責任者(CEO)で、海運会社マースクの取締役だったラース・イェンセン氏は、「危機前の状態と物理的に同じ」サプライチェーンを海運業界が取り戻すまでには数カ月かかる可能性があると、BBCラジオ4の番組「トゥデイ」で話した。
同氏はまた、イランとアメリカの合意が数日中に発表されたとしても、海運業界は「大幅な業務上の変更」には「慎重でためらう」態度を維持するだろうと説明した。
中東全域で続く現在の紛争は、アメリカとイスラエルが2月28日、イランの広い範囲を空爆したことで始まった。イランは対応として、イスラエルやペルシャ湾岸の米同盟国などを攻撃し、ホルムズ海峡の実質封鎖を続けている。影響で、世界で原油価格が急騰している。
4月になり、双方の間で停戦が合意された。直後から、アメリカはイランの港湾に出入りする船舶を対象とした海上封鎖を実施している。トランプ氏はこの措置について、「合意が成立し、認証され、署名されるまで、引き続き完全に有効だ」としている。
トランプ氏は24日、「トゥルース・ソーシャル」に、イランは核兵器を開発してはならないことを「理解しなくてはならない」と投稿した。イランは一貫して、自国の原子力計画はもっぱら平和目的だと主張し続けている。
米メディアの一部の報道では、合意によって、イランが高濃縮ウランを最終的に引き渡すことに同意する可能性があるという。
イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は、「私たちが核兵器を追求していないことを世界に保証する」用意が同国にはあると、国営テレビで述べている。











