英野党ファラージ党首の議員辞職に伴う補欠選挙の実施確定 主要政党はボイコット表明

スーツとネクタイ姿で屋外に立ち、眉をしかめるナイジェル・ファラージ氏

画像提供, Getty Images

Published
この記事は約 5 分で読めます

イギリスの野党リフォームUKを率いるナイジェル・ファラージ党首が下院議員を辞職すると表明したことに伴い、イングランド南東部クラクトン選挙区で補欠選挙が実施されることが9日、正式に決まった。

リフォームUKのリー・アンダーソン下院院内幹事長は9日午前、補欠選挙実施のための動議を提出した。これに伴い、8月13日にクラクトン選挙区で補選が行われる見通しだが、正式な日程は未定。

ファラージ氏は、支持者から自分が受け取った資金や便宜をめぐり厳しく追及されている事態を受け、クラクトン選出の下院議員をいったん辞任し、それに伴い行われる補欠選挙にあらためて出馬すると表明していた。

ファラージ氏は、下院議員になる前に富豪の支持者から500万ポンド(約10億1600万円)を贈与されていたのを申告しなかったとして、議員の行動・倫理規定を監督する議会基準委員会の調査を今年5月から受けている

ファラージ氏は7日の演説で、「私の行動の是非を判断するのはクラクトンの人たちであるべきだ」と述べ、自分は間違ったことは何もしていないと主張した。しかし、保守党、労働党、リストア・ブリテン、自由民主党、緑の党の各政党は、このような形で補選が行われた場合には、対立候補を擁立しないと反応した。主要政党が事実上、ファラージ氏の動きをボイコットする形になっている。

こうしたなか、野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は7日、「議会基準委の調査が完了するまで、(政府が)彼の辞任を阻止すべきだ」と主張。「もしこの補欠選挙が実施されるようなら我々は、全ての政党に対し参加しないよう、ファラージの自己満足プロジェクトに協力しないよう求める」とも、デイヴィー氏は述べた。

デイヴィー氏は8日にもソーシャルメディアで、「クラクトンの人たちはまず事実を知る権利がある」と書いた。

ファラージ氏の議員辞職が正式に成立するには、議員資格の喪失を認める政府手続きが必要だった。

議会規則では、下院議員が辞職したい場合は、まず財務相に書面で申し出る必要がある。財務相は、規則上はこれを拒否できるものの、慣例として通常は辞任の申し出を受け入れる。

レイチェル・リーヴス財務相は8日にソーシャルメディア「X」に、ファラージ氏の議員辞職の申し出を受けると書いた。

財務相は、補欠選挙は「茶番で、必死の目くらましだ。クラクトンの人々はもっとまともな扱いを受けるべきだ」としつつ、「それでも、もし彼が夏の間ずっと、ごみ箱と口論したいなら、私は止めません」とも書いた。

「ごみ箱」とは、大きなごみ箱状のかぶりものをしてさまざまな選挙に出馬する、いわゆる「覆面候補」の「ビンフェイス伯爵」を指す(ビンフェイスは「顔がごみ箱」の意味)。

労働党をはじめとする主要政党はクラクトン補選をボイコットする方針を示しているが、ファラージ氏の対立候補として「ビンフェイス伯爵」が出馬表明している。「ビンフェイス伯爵」の「正体」は、政治コメディーなどの脚本家、ジョナサン・ハーヴィー氏。

野党・緑の党のハナ・スペンサー下院議員は、「私たちは夏の間、クラクトン補欠選挙という茶番劇を眺めることになる。候補者の一人はごみだらけのふざけたキャラクターで、もう一人はビンフェイス伯爵だ」と述べた。

クラクトン補選にはこのほか、俳優から政治家に転身したローレンス・フォックス氏が7日夜、出馬を表明した。フォックス氏はクラクトンに近いペルドン在住で、「リクレーム党」を率いている。ほかに、「フォワード党」のアダム・アルカティップ党首も立候補を表明している。

動画説明, イギリスの選挙常連候補「顔がごみ箱伯爵」とは? 補選でファラージ氏に挑戦

ファラージ氏についてはすでに議会調査が始まっている贈与500万ポンドのほかに、2024年7月の総選挙を前に、イギリスの資産家で政治活動家のジョージ・コトレル元受刑者から支援を受けていたと英紙サンデー・タイムズが伝えた。イギリスの貴族の家系出身のコトレル氏は2017年、アメリカにおいて電信詐欺罪で有罪を認め、禁錮8カ月の実刑判決を受けていた。

5日付のサンデー・タイムズによると、コトレル氏は2024年の総選挙に向けて、ファラージ氏の警備スタッフや、ソーシャルメディアのコンテンツ制作スタッフへの報酬を提供した。自分がバッキンガム宮殿の近くに借りていた物件を、ファラージ氏に使わせるなどの便宜も図ったという。

コトレル氏からの便宜供与についても、他の政党は基準委の調査を求めている。

リフォームUKのロバート・ジェンリック下院議員は9日、ファラージ氏が議会調査の結果を待たない「臆病者」だと非難する意見を否定した。

ジェンリック議員はイギリスのラジオ局LBCの番組で、電話をかけてくるリスナーのさまざまな質問や意見に応じる中で、「補欠選挙の実施を求める人を、決して臆病者と呼ぶことはできないと思う」と述べた。

「(ファラージ氏が)補欠選挙に臨むのは、いずれ補選になるのが避けられなかったからだ。すべての政党の指導者たちは、状況を完全に先入観で判断している」とも話した。

ジェンリック氏はさらに、ファラージ氏が今回の補欠選挙で勝利した後、議会調査の結果によって議員失格となり2度目の補欠選挙に至る事態となれば、有権者は「体制側がこの人を迫害している」と受け止めるはずだとも述べた。

補欠選挙の費用は通常は政府資金が使われるが、リフォームUKは今回の費用は自党が負担すると申し出た。

2016年の政府試算によると、補欠選挙を行うためには22万8964ポンド(約5000万円)がかかる。この10年間で費用はさらに増えていると思われる。

しかし、政府はリフォームUKの提案を拒否している。首相官邸の報道官は8日、「選挙プロセスの独立性と公平性を維持するため、選挙運営費用は政党や候補者ではなく公的資金から賄われなければならないと法律で明確に定められている」と述べた。

議会で補選実施の動議が提出され、正式に補欠選挙が開始される手続きが始まってから、通常は21日から27営業日の間に選挙が実施される。

選挙は通常木曜日に行われるため、8月13日が投票日として有力視されている。