ウクライナ、クリミア沖で燃料輸送中のロシア船を攻撃 燃料供給網への攻撃強化

白黒画像の中央に船舶の輪郭があり、煙が上がっているように見える

画像提供, Magyar/Social media

画像説明, ウクライナのドローンカメラがとらえた船舶攻撃の静止画
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イリヤ・アビシェフBBCニュースロシア語記者、ポール・ブラウンBBCヴェリファイ記者、ポール・カービーBBC欧州デジタル編集長

ウクライナ軍はこのところ、ロシアが2014年に違法に併合した南部クリミア半島周辺での攻撃を激化させている。クリミア半島につながるロシアの陸上回廊のほか、海上の補給路も標的にしている。

ウクライナ軍のドローン部隊を率いるロベルト・ブロウディ司令官(通称マジャル)によると、ケルチ海峡を通じて黒海とつながる内海のアゾフ海では、過去4日間で少なくとも25隻の船舶が攻撃を受け、炎上したという。

これほどの短期間で受けた損失は、ロシアの海軍力にとってだけでなく、ウラジーミル・プーチン大統領が保証した燃料供給の維持にとっても明らかな打撃だ。

こうした攻撃は、ロシア占領下のクリミア半島に出入りする補給や供給ルートを遮断することを目的とした、ウクライナの「物流封鎖」が新たな段階へ入ったことの現れとみられる。

ウクライナ軍は一連の攻撃で36隻の船舶が打撃を受けたと明らかにし、その大半はロシアの「影の艦隊」に属する商業用石油タンカーだとしている。ただ、同じ船が複数回攻撃された可能性があり、またすべての攻撃が独自に確認されたわけではないため、正確な船舶の数は不明だ。

動画説明, ウクライナ軍が公開した、ロシアのタンカーに対するドローン攻撃の動画

ロシア占領下のクリミア半島北東部沖のアゾフ海で、タンカーが航行する光景は珍しくはない。ケルチ海峡に面したクリミア半島の港に、陸上石油積出施設があるからだ。

ケルチ海峡に面した港は先月、ウクライナの攻撃を受けた。BBCヴェリファイ(検証チーム)が衛星画像を分析したところ、その後の数日間で、同海域にいるタンカーの数が減少したことが確認された。

夜間に撮影された、最新の攻撃を捉えた映像は、7日未明からソーシャルメディア上に浮上し始めた。ウクライナ軍のブロウディ司令官は、7月6日から9日まで毎日行った攻撃について詳しく説明した。

ロシア南部ロストフ州のユーリ・スリュサル知事は、アゾフ海北東端のタガンログ湾で8日、燃料を積んでいないタンカー2隻が攻撃されたと述べた。2隻は9日も燃え続けていたという。

ウクライナ軍のブロウディ司令官は、週前半に攻撃を受けたタンカー2隻について、タガンログ湾周辺からクリミアへ約7000トンの燃料を輸送中だったとしている。

8日に撮影された衛星画像には、クリミアの沿岸から約4.2キロメートル沖合で、船舶1隻から大きな煙が立ち上る様子が写っている。

クリミア半島の一部とアゾフ海を示す地図。クリミア半島の北側の海域で煙が、東側の海域で複数の船舶が南下する様子が確認された

米航空宇宙局(NASA)のデータでは、同海域では7月6日から火災が続いていることが示されている。ウクライナのドローン部隊が実行したと主張する、攻撃の第1波による可能性が高い。

同じ画像には、別の約20隻の船舶がこの海域を離れ、黒海方面へ南下している様子も写っている。

ウクライナの無人システム部隊のトップは、攻撃を受けたタンカーの一部の名前は、「ヴェネラ3」、「サナル1」、「サナル17」、「クリメナ」、「テティス」、「アレクセイ・サヴラソフ」、「ペネロパ」だとした。

ケルチ海峡沿いの港では、旅客フェリー「SKS One」とばら積み貨物船も攻撃を受けた。これらの船舶をとらえた画像もソーシャルメディアに投稿されている。

白黒画像の左側に港の構造物の輪郭が、中央には港に停泊するフェリーの輪郭が見える

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画像説明, ウクライナ軍のドローン部隊を率いるブロウディ司令官は、ケルチ海峡沿いの港に停泊中の旅客フェリー「SKS One」をとらえた画像だとしている

アゾフ海を離れても、必ずしもウクライナのドローン攻撃を回避できるわけではない。

ウクライナ軍参謀本部は8日、制裁対象となっているタンカー「ブルー」に対するドローン攻撃の映像を公開した。

この映像には、無人機が砲火をかわしながらタンカーに接近する様子が映っている。映像は、船体に近づいたところで途切れている。

映像が撮影された場所は確認できないものの、ウクライナ側は、クリミア半島の黒海沿岸のリゾート都市ヤルタ近郊での攻撃だとしている。

このタンカーへの攻撃は、ロシアの石油精製所に対する継続的攻撃と同時期に起きている。石油精製所への攻撃は、モスクワやサンクトペテルブルクを含むロシア各地で広範な燃料不足を引き起こしている。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、石油精製所を標的にすることについて、ロシアによる攻撃への正当な対応であり、ロシア国民は「戦争を仕掛けているのは自分たちの国なのだと実感」する必要があると述べた。

ゼレンスキー氏はさらに、前線から数百キロメートル離れたロシア北西部トヴェリ州と南部スタヴロポリ地方の石油貯蔵施設への攻撃と、タガンログ湾内陸部にあるロストフ州の名称不明の石油ターミナルへの攻撃にも言及した。これはユグ・ルシという施設とみられる。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は7日、トルコ・アンカラで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でゼレンスキー氏と会談した際、このドローン戦略を事態激化だと形容した。一方で、「(戦争の)終結につながるのを助けられる事態激化でもある」と述べた。

しかし、ここ数日で激化しているように見えるのは、ロシアの海上物流に対するドローン攻撃の規模だ。

ブロウディ司令官は、8日から9日にかけての一晩だけでタンカー12隻を攻撃したと主張している。ロシアの戦争支持派の情報筋は、この攻撃の詳細や映像の信憑性(しんぴょうせい)について異議を唱えていない。

通信アプリ「テレグラム」のチャンネル「ミリタリー・インフォーマント」は、防衛手段を欠いたタンカーが航行しているという状況が、ウクライナのドローン操縦者にとっての事実上の射撃場になっていると不満を示した。現在、黒海艦隊は自らの防衛さえままならず、タンカーを守る余力がないとされる。

テレグラムチャンネル「Rybar」の運営者ミハイル・ズヴィンチュク氏は、黒海艦隊は「いまや(ロシア南部の黒海沿岸)ノヴォロシースクに閉じこもっている」と指摘した。

ロシアでは石油精製能力が低下し、特にクリミアでは燃料不足が深刻化しているだけに、今回のウクライナの攻撃は痛手となるだろう。

プーチン氏は6月下旬、クリミアの月間の燃料需要を7万トンと推計。陸路と海路の両方で輸送を増やし、クリミアへの供給を確保すると約束した。アゾフ海で攻撃されたタンカーは、その量を大きく上回る燃料を運んでいた可能性がある。

現在、ロシアの90%以上の地域で燃料の配給制の導入または燃料不足が起きている。同国はディーゼル燃料の輸出を禁止している。大都市のガソリンスタンドでは行列ができていると報告されている。

クリミアでは、ロシアが任命した当局が、電力供給や交通の混乱への対応に苦慮している。

ウクライナ軍はすでに、クリミアへのロシアの陸上補給路を脅かしている。そして今では、海上補給路にも攻撃を加えている。

(追加取材:アレックス・マリー、アダム・ダービン、ケヴィン・グエン、トム・シール)