トランプ氏がIRSと和解、自らと家族などに対する税務調査を禁止する条項を追加

ダークスーツ姿のトランプ氏が立って前方を見ている。背後には米国旗が立てられている

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画像説明, アメリカのトランプ大統領
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アメリカの司法省は、ドナルド・トランプ大統領が自身の納税申告書の流出をめぐって起こしていた訴訟で、18日に前例のない和解が成立し、内国歳入庁(IRS)は今後、トランプ氏と家族、および関連企業の過去の納税申告を調査することが認められなくなったと発表した。

調査の禁止は、和解で付帯条項として加えられた。一部の議員や法律の専門家らは、現在進行中の税務調査や捜査を停止させるもので、司法省による連邦法違反だとしている。一方、同省は、和解において慣例的に用いられる免責条項に過ぎないとしている。

トランプ氏と年長の息子2人は今年1月、自身の事業や個人の納税申告書が流出したことをめぐり、IRSを相手に100億ドル(約1兆5900億円)の損害賠償を求める訴訟を起こした。アメリカの大統領が自国の政府を訴えたのは初めてだった。

司法省は18日、この訴訟が和解に至ったと発表。さらに、不当な調査を受けたと考える人々を補償するため、政府が約18億ドル(約2860億円)の基金の設立で合意したと明らかにした。

付帯条項の内容は?

司法省は、トランプ氏との和解を発表した翌19日、同氏に関連した継続中の税務調査をすべて終了させるとした付帯文書を公表した。

この1ページの付帯文書には、個人や企業が適切な納税を行っているかを判断し、未納税があった場合に是正措置を求めるなどのIRSの通常の措置を、トランプ氏と家族、その信託、企業、子会社による納税申告に対しては「永久に禁止され、排除される」と明記してある。

重要なのは、対象の納税申告が2026年5月19日より前のものとされている点だ。司法省は声明で、この措置は「既存の監査にのみ適用され、将来の監査には適用されない」と明言した。

IRSは調査内容を公表しないため、トランプ氏や家族、関連企業に関して調査が進められていたのか、そうだとしたらどんな内容だったのか、といったことは不明だ。

これは合法なのか?

上院財政委員会の民主党筆頭委員のロン・ワイデン氏は、今回の付帯条項について、「IRSの監査への行政当局による干渉を禁じる法律に明らかに違反している」と述べた。

そして、「民主党はこの利益相反的な和解のあらゆる点について闘うつもりだが、その結果がどうあれ、将来の政権やIRS幹部は、この違法な指示を完全に無効なものとして扱うべきだ」とした。ワイデン氏はオレゴン大学ロースクールを修了している。

連邦法では、大統領、副大統領、および行政府の他のほとんどの高官は、直接または間接的にIRSに対し調査の中止を求めることはできない。

主な例外は司法長官だ。今回の付帯文書にはトッド・ブランチ司法長官代行が署名している。そのため、トランプ政権は、法律に従ったと主張することも可能だ。

ダークスーツ姿のトランプ氏が、芝生の上で家族らと並んで立っている。着飾った子どもたちも多数いる。後方にはメディア関係者らの姿がある

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画像説明, トランプ氏(左端)とその家族は、今回の付帯条項により進行中の税務調査の対象外となる

市民団体「パブリック・シチズン」共同代表のロバート・ワイスマン氏とリサ・ギルバート氏らは、トランプ氏が間接的に監査の終了を狙っていたとみている。

両氏は声明で、トランプ氏が「悪意のある訴訟」を提起し、和解を通じて「IRSの監査から逃れようとした」とした。

IRS職員は、監査の中止を求める違法な要請を受けた場合、それを報告しなければならない。報告しなければ刑事訴追される可能性があることから、専門家らは、IRS職員にはこれで、法的リスクにさらされる可能性が生じたと警告している。

税務の専門家らは、今回の合意には他にも、連邦法に反する点があるとしている。

IRSは、関係する納税者と合意に達するか、司法省に案件を移送することで、個々の事案を終わらせる。だが今回は、IRSがいずれかの措置を取ったことを示す記録はない。

今回の付帯条項は、税務案件ではなく、IRSを相手とした訴訟の中で盛り込まれた。また、調査を阻止する広範かつ包括的な権利放棄であり、標準的なものとは言えず、IRSが合意したものでもない。

「タックス・ロー・センター」の政策担当ディレクター、ブランドン・デボット氏は「これは、大統領、その関連団体、およびその家族を、税法よりも上位に置くことを意図している。司法省は単独で、そのような特例的な保護を提供する権限を持っていないのにだ」と声明で主張。和解全体を「税制および法制度の驚くべき乱用」だとした。