韓国スタバ、「光州事件」想起させるキャンペーンに批判殺到 CEO解任
ケリー・アン記者、ジェイク・クウォン・ソウル特派員

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韓国のスターバックスは18日、新しい販促キャンペーンが、多数の死者を出した歴史的事件を題材にしたと広く受け止められ、厳しく批判された事態を受け、トップを解任した。
スターバックスは、「光州事件」の記念日にあたるこの日、コーヒータンブラーの販促キャンペーン「タンク・デー」を開始した。同社のタンブラー「タンク(Tank、英語で容器の意味)」シリーズが対象で、キャンペーン名も英語で「Tank Day」とされていた。
しかし、英語の「タンク」には戦車という意味もある。多くの人は、今回の「タンク」というモチーフが、1980年5月18日に民主化を求める抗議運動を鎮圧するため、当時の軍事政権が投入した戒厳軍の装甲車などへの言及だと受け止めた。
このプロモーションに対し韓国国内では、スターバックスをボイコットするよう求める声があがったほか、李在明大統領も厳しく非難した。
同社は、開始から数時間後にこのキャンペーンを中止した。同チェーン株式の67.5%を保有する新世界グループは、「不適切なマーケティング」について謝罪し、ソン・ジョンヒョン最高経営責任者(CEO)を解任した。
同社は「この件でお客様にご不便とご心配をおかけしたことを、心よりおわびする」としたうえで、「当該イベントは直ちに中止し、今後同様の事例の再発防止のため、内部プロセスを点検・改善していく」と述べた。
新世界グループの鄭溶鎮(チョン・ヨンジン)会長は、「この国の民主主義に貢献してきた全員の苦痛と犠牲を軽視する、弁解の余地のない過ちだ」と述べた。
19日に発表された声明で同氏は、このキャンペーンの社内承認手続きについて「徹底的に調査する」と表明。また、全関連会社でマーケティングの「審査プロセスを再検討する」と述べた。
アメリカのスターバックス本社も謝罪を発表し、「意図的ではなかったにしても、(この出来事は)決して起きてはならなかった」と認めた。
また、「我々はこの件が、とりわけ犠牲者やその家族、そして韓国の民主化に寄与したすべての人々に深い痛みと侮辱を引き起こしたことを認識している」と述べた。
アメリカを本拠地とするスターバックス社は、2021年7月に韓国合弁の持ち分を売却して以降、韓国のスターバックス事業には一切関与していない。韓国では、新世界グループのイーマート社がスターバックス・コリアの持分67.5%を保有し、残りはシンガポールの政府系ファンドGICが保有している。
大統領も「我が国の価値を否定」と批判
李大統領もこのキャンペーンを批判し、光州事件の「犠牲者と、住民たちの血の闘争を侮辱する」ものだと述べた。
李氏はソーシャルメディアへの投稿で、「この日にどれほど多くの命が奪われ、そしてそれが我が国の正義と歴史にどれほど重大な後退をもたらしたかを知りながら、いったい何を考えていたのか」と指摘。
「低俗な商人たちによる、基本的人権と民主主義という我が国の価値を否定するような非人道的な振る舞いに、私は憤慨している」と書き込んだ。
ソーシャルメディアでは、複数のユーザーが、スターバックスと新世界グループの双方をボイコットするよう呼びかけた。
Xには、「こんなことをやっても、大して問題にならないだろうと思うなど、信じられない(中略)まったくばかげていて腹立たしい」という投稿もあった。

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1980年5月18日の光州事件では、民主化デモに参加した市民数百人が、全斗煥(チョン・ドゥファン)軍事政権が投入した部隊により殺害されたと推定されている。
その後、この虐殺に関する調査が進むと、この部隊がレイプや性的暴行を行っていたことも確認された。
それ以降、韓国では数々の映画やテレビ番組が、5月18日は国家的なトラウマの日として描いてきた。民主主義にとって神聖な日として、記念式典が毎年行われる。
光州事件は、韓国を民主主義への道へと導く出来事となり、これを機にその後7年間の民主化運動で活動家たちは結束した。1987年6月の「6月民衆抗争」と呼ばれる連日の反政府デモを経て、「民主化宣言(6・29宣言)」が発表されるに至った。
なお、スターバックスのキャンペーンをめぐっては、1987年1月の事件にも関連したものだという指摘も出ている。
タンブラーの販促資料では、韓国語で「テーブルにタク!」という表現が使われていた。「タク」は、物がテーブルに叩きつけられる音に似た言葉だが、1987年1月に警察の拘束下で死亡した学生活動家に関する、警察の説明でも使われた表現で、当時しきりに批判された。
警察は当時、取り調べの担当者が机を強く叩いた後に朴鐘哲氏が倒れて死亡したと説明していたが、実際には、朴氏は拷問を受けて死亡していた。





