イスラエルの極右閣僚、ICC検察官が逮捕状請求と主張 対抗措置で西岸地区の村に退去命令

ダークスーツに白シャツ姿のスモトリッチ氏が、集まった人々と笑顔で握手している。周囲には大勢の人や、肩にイスラエル国旗がついた当局者が立っている

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画像説明, ベザレル・スモトリッチ財務相らイスラエルの国家主義者は14日、「エルサレムの日」の行進に参加した(14日、エルサレム旧市街)
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ヨランド・ネル中東特派員、デイヴィッド・グリッテン記者

イスラエルの極右政治家、ベザレル・スモトリッチ財務相は19日、国際刑事裁判所(ICC)の検察官が自身に対する「秘密の」逮捕状を請求したと伝えられたと述べた。

同氏は、告発の内容については明らかにしなかった。しかし、この動きを「宣戦布告」だと表現し、パレスチナ自治政府を非難した。

ICCの逮捕状請求の手続きは機密扱いだが、ICC裁判官の承認を得る必要がある。ICCはこの件に対するコメントを避けた。

スモトリッチ氏はこの件への対応として、イスラエル占領下のヨルダン川西岸地区のパレスチナ人ベドウィン(アラブ系遊牧民)の村ハーン・アル・アフマルの解体を命じた。同氏は、イスラエルの西岸地区政策に広範な権限を持つ。

パレスチナ自治政府の当局者は、この命令を「危険なエスカレーション」だと非難した。

イスラエル最高裁は2018年、ハーン・アル・アフマルの住民に立ち退き命令を指示したが、国連やICCなどが国際法違反になると警告したため、現在まで執行されていない。

パレスチナ人の村を標的に

スモトリッチ氏は19日の記者会見で、「昨夜、私に対して秘密の国際逮捕状の請求が、ハーグにある反ユダヤ的な裁判所の犯罪検察官によって提出されたと報告を受けた」と述べた。

「主権を持つ独立国家として、イスラエル国家に対して一貫して敵対する偏った機関からの偽善的な指図を受け入れることはない」と、同氏は付け加えた。

そのうえで、「徹底的に報復する」と約束し、ヨルダン川西岸でイスラエルの支配が及ばない地域を統治するパレスチナ自治政府に対し、「戦争を始めたのはそちらであり、戦争を受けることになる」と警告。

「ここでの私の発言が終わり次第、直ちにハーン・アル・アフマルからの退去命令に署名する」と述べた。

ICCの検察局は、「逮捕状請求があったとされる件に関する質問についてはコメントできない」と述べ、このような請求は「ICCの裁判官が別段の許可を与えない限り、秘密または封印扱いに分類される」と説明した。

一方、パレスチナ自治政府の「壁と入植地抵抗委員会」のムアイヤド・シャアバン委員長は、ハーン・アル・アフマルに対する退去命令は、「イスラエルの占領政府がパレスチナ人に対して進めている強制移住政策における、危険なエスカレーションに当たる」と述べた。

シャアバン氏はまた、この動きが東エルサレムにおける長期計画の枠組みの中にあると指摘し、「イスラエルは入植地間の完全な領土的連続性を確立しようとしている。その結果、ヨルダン川西岸の北部と南部を分断し、地理的に連続した実効性のあるパレスチナ国家の可能性を事実上破壊している」と警告した。

イスラエルは、1967年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸と東エルサレムを占領して以来、この土地に約160の入植地を建設。こうした入植地は、国際法で違法とされている。パレスチナ人は、ガザ地区と共に、これら入植地も将来、自分たちの独立国家に含まれるとしている。

入植地の周辺には、推定で330万人のパレスチナ人が暮らしている。

イギリスなど西側5カ国は昨年6月、入植地に居住するスモトリッチ氏と、同じくイスラエルの極右閣僚であるイタマル・ベン・グヴィル国家安全保障相に対し、ヨルダン川西岸地区で、「パレスチナ人コミュニティーに対する暴力行為を繰り返し扇動した」として制裁を科した。

乾燥した丘陵地帯に、テント屋根やプレハブ造りの建物が密集している。その上の道を、頭にスカーフをかぶり、リュックを背負った3人の少女が歩いている

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画像説明, ベドウィンの村ハーン・アル・アフマル(資料写真)

イスラエル紙ハアレツは17日、関係者の話として、ICCの検察官がスモトリッチ氏を含むイスラエルの政治・軍関係者5人に対し、パレスチナ人に対する犯罪の疑いで新たな逮捕状を請求したと報じた。

しかし、同裁判所の報道官はロイター通信に対し、「パレスチナ国家に関する状況において、新たな逮捕状が発行されたとの事実を否定する」と述べた。

2024年11月、ICCの裁判官は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相および元国防相ヨアヴ・ガラント氏に対する逮捕状を発行し、ガザでの戦争における戦争犯罪および人道に対する罪の疑いについて、両氏が刑事責任を負っていると信じるに足る「合理的根拠」があると述べた。

イスラエル政府と両氏はいずれも、これらの非難を退けた。

これに先立つ同年5月には、同じ容疑でガザの武装組織ハマスの幹部3人に対する逮捕状が請求された。

このうち、ガザ地区での最高指導者だったヤヒヤ・シンワル氏と、政治局長だったイスマイル・ハニヤ氏は、いずれの逮捕状も発行される前にイスラエル軍によって殺害されていた。軍事部門カッサム旅団のモハメド・デイフ司令官についても、ハマスが死亡を確認したことを受け、2025年2月に逮捕状が取り消されている。

ICCには、設置条約「ローマ規程」の締約国の領内で起きたジェノサイド(集団殺害)や人道に対する罪、戦争犯罪を行った人物を起訴・審理する権限をもつ。

締約国ではないイスラエルは、ICCの管轄権は同国にはおよばないとしている。しかしICCは2015年、パレスチナがローマ規程を批准しているため、ICCの管轄権はヨルダン川西岸地区や東エルサレム、ガザ地区におよぶと判断した。