日本で4月から離婚後の共同親権スタート、子の利益と安全への懸念のバランスに揺れる

パーカーを着た男性が腕に赤ちゃんを抱き、公園の木の橋を渡っている

画像提供, Jiro Akiba/BBC

画像説明, 日本ではこれまで、父母の離婚後は、一方の親だけが親権者になれた
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森来実(もり・くるみ)東京特派員

平日の午後、ジョン・デンさん(仮名)は公園の遊具エリアの近くに立ち、子どもたちが遊び、笑うのに耳を傾けている。

しかしそこに、自分の息子と娘の姿はない。かつて子どもたちと共に過ごしたありふれた時間――公園に連れて行くこと、目を覚ますのを見守ること、自分が子どもたちの生活の一部であること――を、デンさんは懐かしく思っている。

デンさんは香港出身で、過去22年間、日本で暮らしてきた。生活を築き、元パートナーと出会い、8歳の息子と10歳の娘の父親になった。

しかしデンさんによると、その生活は崩壊してしまった。結婚生活は破綻し、元パートナーが何の前触れもなく子どもたちを連れ去ったのだという。

日本でこうした話は珍しくない。この国ではもう何十年も、両親の離婚とはしばしば、子どもが一方の親の存在を完全に失うことを意味してきた。このような場合、多くは最初に子どもを連れて出て行った親に親権が与えられてきた。

従来の単独親権制度では、離婚後に子どもの親権を持つのは一方の親だけだった。つまり、子どもとの関係性にかかわらず、もう一方の親は、親権を持つ親が接触を認めない限り、子どもの人生から排除される可能性があった。

しかし、状況は変わろうとしている。日本は、離婚後の「家族」のあり方を再定義しつつある。

今年4月1日、離婚した父母の双方が親権を持てるようにする改正民法が施行された。2024年に国会がこの改正案を承認するまで、日本は主要7カ国(G7)の中で唯一、共同親権という法的枠組みがない国だった。

「アメリカやイギリスの弁護士と話すたびに、親権とは勝ち取ったり失ったりするものではないと言われるのが、いつも衝撃的だった」と、世田谷国際法律事務所の佐藤聖也弁護士は振り返る。「重視すべきはただ、子どもにとって最善の利益だ」。

公園のアスレチック遊具で遊ぶ子供たち。大人も数人いる

画像提供, Jiro Akiba/BBC

画像説明, 改正民法が施行され、日本でも離婚した父母が共同親権を持つことが可能になった

デンさんは、自分が子どもたちを失ったと気づいた瞬間を正確に覚えている。「無力だと感じた(中略)悲しみと同時に、これを可能にする制度への怒りもあった」と、デンさんは静かに語った。「子どもたちは私にとってすべてなので」。

何か機会があればしがみつくしかないと、デンさんは話す。デンさんは現在、2軒の住居を維持している。1軒は東京、もう1軒はそこから1時間ほど離れた、子どもたちが暮らす場所により近い地域にある。

それでもデンさんに認められているのは、毎月わずか数時間の監視付きの面会だけだ。そのほかは一切の接触が許されていない。

デンさんによると、元パートナーは娘が電話で父親と連絡を取ることを許さなくなった。そのため、子どもの誕生日や学校の発表会、父の日といった行事を逃すという具体的な事柄だけでなく、デンさんの気持ちにも影響が出ている。

「とにかく、自分がからっぽな感じがする」と、デンさんは涙をこらえながら話した。「子どもたちには、その必要があると思ったり、そうしたいと思ったりしたら、いつでも両方の親と話す権利があると思う。でも現時点ではそうなっていない」。

親権に関する民法改正は、子どもから引き離されたと感じているデンさんのような親たちに、いくらかの希望をもたらしている。

今回の改正は日本の家族法において、この数十年で最も重要な変更の一つでもある。

厚生労働省の人口動態調査によると、最新データの2024年には、婚姻関係の約38.5%が解消された。つまり、およそ3組に1組が離婚したことになる。

また、離婚の86%以上のケースで女性が子ども全員の親権を保持し、父母が互いの取り決めで子どもの親権を分け合って行う例は合意全体のごく一部にとどまった。日本全体ではこの年、親が離婚し、親権の取り決めの影響を受けた18歳未満の子どもは16万4000人超に上った。

改正民法は、子どもが両方の親との関係を維持することで利益を得る場合が多いことを認めるとともに、親としての責任をより均等に分担することを促す。

「これは社会にとって、特に子どもたちにとって、間違いなく良い変化だと100%確信している」と、前出の佐藤弁護士は話す。

「すでに円満で、共同で意思決定ができる人たちにとっては、共同親権という選択肢を持てることは非常に良いことだ。それは大きな前進だと思う」

今回の変更は、日本が出生率の低下と急速な高齢化に直面する中で行われた。こうした人口動態の傾向は、政府に対し、家族支援の強化やひとり親世帯の経済的負担の軽減を求める声を強めている。

家庭内暴力や虐待被害者への影響を懸念

デモに参加している女性たちが、「離婚後の共同親権から子どもたちを守ろう」と書かれた黄色い横断幕を掲げている。その後ろにも、さまざまなプラカードを掲げた参加者たちがいる

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画像説明, 法改正に反対する人々は、元パートナーが子どもの生活に再び関与することを懸念している。写真は、2024年3月に国会前で行われたデモの様子

今回の法改正は、日本をほかのG7の水準に近づけ、デンさんのような親に子どもと再び関係を築く機会を与える。しかし、その一方で深刻な懸念も引き起こしている。

法改正に反対している人々は、共同親権が家庭内暴力(DV)や虐待の被害者やサバイバーをより大きな危険にさらしたり、加害者である元パートナーと引き続き、あるいはもう一度関係を持つことを強いたりする可能性があると警告している。

NPO「全国女性シェルターネット」の共同代表を務める北仲千里氏は、「今DVに遭っている家族の中で、DVや児童虐待に遭っている人たちが、おそらく逃げられなくなる危険がある」と述べた。

北仲氏は、日本における共同親権が、特に安全面の懸念があるケースでどういう意味を持つかを十分に理解するよう、親たちに呼びかけていると話した。

商店街のような街中を、スーツ姿の男性とカジュアルな装いの女性が並んで歩いている後ろ姿を写した写真

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画像説明, 今回の法改正は、政府に対し家庭への支援を強化するよう求める声を受けて行われた

一部の家族にとって、共同親権は深い、個人的な恐怖を引き起こしている。

18歳のスズキ・タロウさんは、もはや両親の監護下にはない。しかし、母親のリョウさんが長年、自分の父親からの虐待に苦しむのを見続けたことが、トラウマとして残っていると話す。安全のため、この記事では2人の名前を変更している。

「母親と父親が出会わず、自分が生まれてこなければとすら、それでもいいと思う」と、スズキさんは語った。「本当に、なくていい法律だと思う」。

母親のリョウさんも不安を抱えている。元夫からは壁に押し付けられ、体が浮いた状態で首を絞められたり、髪を引っ張って引きずられたりしたという。

「本当に怖い。単独親権(だけ)だった頃に離婚して、この後はもう大丈夫だと思っていたのに、またつながりを持たれるかもしれない」

リョウさんは、今回の法改正が元夫に、現在15歳の娘に対する共同親権を請求する機会を与え、再び元夫と関係を持たざるを得なくなるのではと心配している。

「子どもが成人するまでの間、ずっとこの不安を抱えていかなくてはならないのは問題だと思う」

もっとも、親権をめぐっては、子供への虐待や心身に危険がある場合の保護措置も加えられた。

佐藤弁護士は、「裁判所が、別居前や離婚前にDVの問題があったと判断すれば、裁判所は必ず単独親権を定めなくてはならない」と説明した。

それでも、リョウさんのようなサバイバーの中には、日本の家庭裁判所がDVの確固たる証拠を求めるのではないかと懸念する人たちがいる。リョウさんも、すべての事例で適切な判断が下されるとは限らないと考えている。リョウさんは自分自身の経験として、元夫は虐待の痕跡を残さないよう注意していたため、身体的な痕跡はほとんどなかったのだと話した。

現時点ではこの法律は、弱い立場にある親を守ることと、子どもが両親との関係を維持することとの、微妙なバランスの上にある。

こうしたなかでもデンさんは、新しい法律によって、再び子どもたちの日常生活の一部になれる可能性に希望を抱いている。

「子どもたちがここにいないという事実だけで悲しくなる」とデンさんは話した。「こんなことは、どの親も経験すべきじゃない」。