イギリス、ロシア産石油への新規制を緩和へ 燃料価格の高騰受け

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ファイサル・イスラム経済編集長、ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員、マイケル・レイス・ビジネス記者
イギリス政府は19日、第三国でディーゼルや航空機燃料に精製されたロシア産石油について予定される、新しい制裁の内容を緩和した。アメリカとイスラエルによるイランとの戦争開始以降、ホルムズ海峡の実質的な封鎖によって特定の燃料の供給懸念が高まっていることを受け、政府は今後、数カ月かけて新しい制裁を「段階的」に導入する方針。
英外務省は、新しい制裁の内容緩和は、ロシア経済への圧力を目的とした従来の制裁の免除ではないと説明している。一方、今までよりも柔軟な対応が必要だと認めた。
ウクライナ大統領府のウラディスラウ・ウラシウク制裁政策担当委員は、「イギリスの決定の根拠」は理解するとしつつ、そのやり方には同意しないと話した。
ウラシウク氏はソーシャルメディアに、「一時的な適用除外が依然として、ロシアの戦争遂行能力に追加収入をもたらす可能性があることを、私たちはとりわけ懸念している」と書いた。
新しい制裁措置は当初の計画では、ロシア産原油を精製して作られた航空機燃料やディーゼル燃料などの石油製品が、第三国を経由してイギリスに流入することを禁止する内容だった。政府が昨年10月に複数の新制裁を発表した際、その一環として明らかにされた。
これに先立ちBBCは2024年2月、制裁が科されているにもかかわらず、世界の貿易ルールの抜け穴を通じてロシア産原油由来の燃料が数百万バレル規模でイギリスに輸入され続けていると報じていた。
エネルギー・クリーンエア研究センター(CREA)は、ロシア産原油への最初の制裁措置が2022年12月に導入されて以来、インドやトルコを経由してロシア産原油から精製された石油製品が約18億ポンド相当、イギリスに輸入されたと推計している。
20日には一部の制裁が導入されたが、ロシア産原油から作られた石油製品の第三国経由の輸入を禁じる措置は、実施が延期された。
計画されていた措置の緩和により、イギリスや欧州にとってこれまで航空機燃料の主な供給源だったインドからの輸入は、事実上認められる。また、トルコでも多くのロシア産原油が精製されている。
イギリス政府は、今後数カ月の間に、第三国経由の輸入禁止を実施していく方針。定期的にルールを見直し、中東情勢のため燃料供給が混乱する中でも事態の不安定化を招くことなく、「全面禁止へと段階的に移行できるようにする」としている。
政府はまた、「イギリスの供給や世界市場の柔軟性を支援するため、精製石油の輸入禁止の枠組み内において」、短期間の認可を「限定的」に出したと述べた。
イギリス政府はさらに今回の禁輸延期は、アメリカが4月に実施して強く批判された制裁免除とは異なると主張した。
米・イスラエルによるイラン戦争が始まって以来、ホルムズ海峡を経ての石油や液化天然ガス(LNG)をはじめとする必需品の輸送は、実質的に止まっている。
従来は、ヨーロッパの航空機燃料の半分以上がホルムズ海峡を通って輸送されていた。戦争による供給混乱の結果、ヨーロッパの航空機燃料価格は戦争開始前のほぼ2倍に上昇している。
米・イスラエルが2月28日にイラン攻撃を始める前、ヨーロッパの航空機燃料は1トン当たり831ドルで取引されていた。これが4月初旬には1838ドルに達し、その後、下落に転じた。現在は1375ドルとなっている。
イギリスはまた、ロシア産LNGおよび関連サービスの海上輸送を禁止する措置を発出するが、期限付きの許可この輸送は1月1日まで継続が認められる。
ロシアのウクライナ全面侵攻を受け、ロシアに経済的圧力をかける国際的取り組みを、イギリスは長年主導してきた。19日には、ロシアに「重大な代償」を払わせるという「揺るぎないコミットメント」を再確認する主要7カ国(G7)の共同声明に署名した。
「否定的なメッセージ」
アラブ首長国連邦(UAE)・ドバイを拠点とするエネルギーコンサルティング会社カマール・エナジーのロビン・ミルズ最高経営責任者(CEO)は、制裁を後退させる今回の措置は適切ではなく、イギリスでの価格引き下げにもつながらないと指摘した。
BBCラジオ4の番組「トゥデイ」に対しミルズ氏は、「この動きは、湾岸の危機を理由にロシアへの制裁が潜在的に弱まっているという、否定的なメッセージを発している。イギリスやアメリカを含む国々が、他の問題を理由に制裁を後退させることを示している」と述べた。
同氏はさらに、航空機燃料に「実際に物理的な不足が生じるという現実的な見通しは、これまで存在しなかった」との見方を示した。
「その意味では、この措置は不要に見える。価格を引き下げることにはならず、そもそも起こる可能性が低かった不足にも対処することにはならない」
欧州の格安航空会社ライアンエアーのマイケル・オレアリー最高経営責任者は18日、燃料不足のリスクは「ほぼゼロ」だと述べた。一方、燃料価格の急騰を受けて一部の航空会社は運航便を取り消している。
英議会下院の首相質疑で20日、最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、政府が「汚れたロシア産原油の購入を選んだ」と非難。キア・スターマー首相が「ウクライナについて後退し、道義的指針を失いつつある」と述べた。
これに対してスターマー首相は政府の制裁政策を擁護し、下院議員たちに対して政府は「新しい制裁を段階的に導入していく」のだと説明。「既存の制裁は一切解除されない」と述べ、政府の対応はむしろ「ロシアへの圧力を強めるものだ」と主張した。
一方、英下院外務特別委員会のエミリー・ソーンベリー委員長(労働党)は、政府の決定に自分は反対だと述べた。
「これは、ロシアとの戦争をもう何年も勇敢に戦ってきた、私たちの支援を受けて戦ってきた、ウクライナという同盟国の話だ。ウクライナはイギリスを、最も重要な同盟国の一つとして見てきた。なのでウクライナには、イギリスの今回の決定が理解できない」のだと、ソーンベリー氏はBBCラジオ4番組「トゥデイ」で述べた。
アメリカは制裁緩和をさらに延長
アメリカは18日、ロシア産石油制裁への緩和措置を延長した。3月に導入したこの措置は、他国が海上輸送中のロシア産原油や石油製品の購入を禁止する制裁を緩和するもの。スコット・ベッセント米財務長官は当時、この「短期的措置」は「世界のエネルギー市場の安定」促進を目的としていると述べていた。
この政策については、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の政権や、2022年から続くウクライナへの全面侵攻を支援することになるとして、多くのアメリカおよびイギリスの同盟国が批判している。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、ホルムズ海峡が閉鎖されていることは、ロシアへの制裁解除を「まったく」正当化しないと指摘。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、アメリカが4月にこの措置の延長を発表した際、「ロシア産原油の代金として支払われる1ドル1ドルが(ロシアにとってウクライナでの)戦争資金になる」と述べた。
イギリス政府の報道官は19日、「ロシアに対する輸出入をいっそう禁止する措置を含む、より厳格な新しい制裁措置を(イギリス政府は)導入した」として、「ウクライナへの私たちの支援は揺るぎない。一連の追加制裁により、ロシアの収入はさらに制限され、プーチンの違法な戦争をウクライナで遂行する能力は弱体化するだろう」と述べた。











