イラン代表団、アメリカと停戦協議のためパキスタン到着 交渉の前提条件示す

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アメリカとの停戦協議に臨むイランの代表団は10日夜、パキスタンの首都イスラマバードに到着した。イラン外務省が発表した。代表団は、モハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長とアッバス・アラグチ議長が率いている。航空関係者によると、アメリカの代表団を率いるJ・D・ヴァンス副大統領も11日午前、イスラマバードに到着したという。イランとアメリカの協議は11日に予定されている。
ガリバフ議長はソーシャルメディア「X」で、「双方が互いに合意した措置のうち二つがまだ実施されていない。交渉開始前のレバノンでの停戦と、イランの凍結資産を解除することだ。交渉が始まる前にこの2件が実現しなくてはならない」と書いた。
イランの準政府系タスニム通信によると、イスラマバードに入った代表団の人数は約70人で、経済や安全保障、政治の専門技官や、報道官が含まれるという。
これに先立ちアメリカのドナルド・トランプ大統領は10日、記者団にイランとの交渉成功とは何をもたらすのかと質問され、体制転換はもう実現したようなので、「核兵器がないことだ」と答えた。
世界経済にとって焦点となっている海運の要衝、ホルムズ海峡の開放については、イランの協力が「あってもなくても」「比較的すぐに」実現すると述べる一方、アメリカは海峡の開放を必要としていないと話した。
また、イランが海峡を通る船舶に通行料を課すのかどうかについては、「そんなことは我々がさせない」と答えた。
トランプ氏はさらに、出発するヴァンス副大統領にうまくいくことを願っていると伝えたと話した。またイランとの協議が一度で済むのか、数週間続くのかについては、まだわからないとしつつ、協議に変わる別案はあるのかとの質問には「別案は必要ない」と答えた。
イランとの協議にはヴァンス副大統領のほか、スティーヴ・ウィトコフ特使と、トランプ氏の娘の夫、ジャレッド・クシュナー氏が参加する。
トランプ氏は7日、アメリカがイランから10項目の提案を受け取ったと発表。イラン側の提案は「交渉の基盤として実行可能なもの」だと表現した。
イランのアッバス・アラグチ外相も、アメリカ側が提示した15項目の提案に言及している。アメリカ側は、これが紛争終結を可能にするものだとしている。
双方の提案はいずれも正式には公表されていない。流出した内容からは、双方の主張が大きく隔たっている様子。
パキスタンは数週間にわたり、イランとアメリカの仲介役を務めてきた。パキスタンとイランとの関係は長年にわたるもので、トランプ氏は、パキスタン軍のアシム・ムニール陸軍参謀長について、イランを「ほぼ誰より深く知っている」と評価している。
他方、イスラエルがレバノン攻撃を続けていることが、停戦協議の不安材料となっている。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、停戦合意はレバノンには適用されないと主張。8日にはイスラエル軍がレバノン全土の標的を爆撃し、レバノン保健省によると300人以上が殺害された。
レバノンとイスラエルの両政府は10日夜、ワシントンで14日から停戦について協議すると発表した。両国のアメリカ大使が電話で話し合い、停戦協議の手はずを整えたとされている。
レバノン当局によると、イスラエルが3月2日から開始した攻撃で、1700人以上が殺害されている。
イスラエルとレバノンとの協議に、イスラエルと協力関係にあるイスラム教シーア派武装組織ヒズボラは参加しないという。
イスラエルのイェヒエル・ライター駐米大使は、「イスラエルは、テロ組織ヒズボラとの停戦協議を拒否した。ヒズボラは依然としてイスラエルを攻撃し続けており、(イスラエルとレバノンの)間の平和にとって最大の障害だ」と述べた。
食い違う要求
アメリカ側は15項目の計画で、イランが全ての主要核施設を解体し、イラン領内でのウラン濃縮を全て終わらせ、濃縮ウランの備蓄を国外へ移転し、核施設への国際査察を受け入れるよう要求しているとされる。
さらにアメリカは、イランに弾道ミサイル開発や長距離ミサイルの製造を中止するよう求めているほか、中東の代理勢力や同盟相手にドローンや軍事関連の品を移転することの中止も要求しているとされる。
他方、イラン国営放送によると、10項目からなる計画の内容は以下の通り。
・イラク、レバノン、イエメンにおける戦争の完全停止
・期限を設けない、イランに対する戦争の完全かつ恒久的な停止
・湾岸地域におけるすべての紛争の全面的な終結
・ホルムズ海峡の再開
・ホルムズ海峡における航行の自由と安全を確保するための協定および条件の確立
・イランに対する復興費用の補償金の全額支払い
・イランへの制裁解除の完全な履行
・アメリカが保有するイランの資金および凍結資産の解放
・イランがいかなる核兵器の保有も求めないことへの全面的な確約
・上記条件が承認され次第、すべての戦線で即時に停戦を発効すること
【解説】イランの前提条件が交渉の複雑さをうかがわせる
ポール・アダムス BBC外交担当編集委員
イラン代表団を率いるガリバフ議長は、レバノンでの停戦と、数十億ドル規模に上るイラン資産の凍結解除を交渉開始の前提条件として示した。このことからも、交渉がいかに複雑なものになるか、その一端がうかがえる。
最も長年続く最大の懸案は、核問題だ。これこそ、西側諸国がイランに対して抱いてきた懸念の根幹にある。イランの政権は、自分たちは核爆弾を開発しようとしたことは一度もないと主張している。しかし、綿密な交渉の末に得られた以前の核合意から、トランプ氏が8年目に離脱して以来、イランは民生用の原子力事業に必要とされる水準をはるかに超えてウラン濃縮を進めてきた。
アメリカは、イランがすでに保有する濃縮ウランを明け渡すよう求めている。しかし、これは難題だ。というのも、イランの濃縮ウランは、アメリカに破壊されたイスファハン近郊の核施設の、そのがれきの下にあると考えられているからだ。
アメリカはさらにイランに、今後いかなる核兵器の開発も目指さないと、約束するよう求めている。一方イランは、自分たちがウランを濃縮する権利は交渉の余地がないとしている。
加えて、ホルムズ海峡の問題がある。今回の戦争の前まで、ホルムズ海峡は問題ではなかったのだが、今やイランにとって最強の武器の一つだ。
イランは今回の戦争で、世界で最も重要な水路の一つを締め上げる態勢を確立した。イランは今後、海上交通を統治する全く新しい決まりごとの体系を導入したい考えだ。これには、船舶を臨検する権利、通行料を徴収する権利、あるいは単に通航を拒否することなどが含まれる可能性がある。
イランが求めるこのような海上交通の決まりごとは、世界のほとんどにとって、とりわけ湾岸諸国にとって、受け入れようもない。
問題はこれだけで終わらない。イスラエルとアメリカは、イランが中東地域にとって有害な影響力を持つとみなし、それを終わらせたいと考えている。対するイランは、すべての国際制裁の完全解除と、過去1カ月で受けた被害への補償を求めている。
イランは過去1年の間に2度、アメリカやイスラエルと交渉しているはずが、その最中に攻撃された。このためイランは、同じことが再び起きない保証も要求している。
こうした問題がイスラマバードで解決されると、本気で考えている人はほとんどいない。協議を前にした状況がいかに不安定かを考えれば、停戦が存続するだけでも、多くの人は喜ぶはずだ。











