ロシア兵約50万人がウクライナでの戦争で死亡と英情報当局

損傷した複数階の建物が並び、枯れ葉がつもる中、重装備の迷彩服姿で歩く兵士2人の背中

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画像説明, ロシア国防省報道部が公表した写真。ロシア兵がウクライナ東部ドネツク州クラスノアルメイスク(ポクロフスク)の道路をパトロールする様子だと、ロシア国防省は説明している
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フランク・ガードナー安全保障担当編集委員、ヘンリー・ムーア記者

イギリス最大のスパイ機関によると、ロシアが2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始して以来、約50万人のロシア兵が死亡した。英政府通信本部(GCHQ)のアン・キースト=バトラー長官が27日、就任後の初の公開演説でそうした分析を明らかにした。

GCHQのキースト=バトラー長官はこの日、ロンドンの北西にあり、第2次世界大戦中のイギリスでナチス・ドイツの暗号通信を解読する拠点だった「ブレッチリー・パーク」で演説。「私たちがウクライナへの支持を堅持する中、プーチンは戦場で後退している」と強調した。

ウクライナ、ロシアの両政府はこれまで、相手側の死傷者推計を定期的に公表してきたものの、自国の損失の詳細についてはあまり明らかにしていない。

ただし今年2月にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、2022年以降にウクライナ軍は兵5万5000人を失ったと発言した。

BBCニュース・ロシア語は2022年2月以降、独立系メディア「メディアゾーナ」やボランティア・グループとともに、ロシア側の戦死者数を集計してきた。公式発表、新聞、ソーシャルメディア、新設される慰霊碑や墓などをもとに、死亡が確認できた個人の名簿を作成している。

BBCはこれまでに、ウクライナで死亡したロシア側の兵士・将校22万3539人の氏名を確認している。

実際の死者数はこれを大きく上回るとみられている。BBCが話を聞いた軍事専門家によると、墓地、戦争記念碑、死亡記事を使うBBCの分析が把握する戦死者数は、全体の45〜65%に相当する可能性がある。

キースト=バトラー長官は、ロシアがウクライナ全面侵攻を開始して以来、イギリスをはじめ西側諸国がウクライナを支援し続けてきた状況で、ロシアはイギリスなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国に対して、宣戦布告のない「ハイブリッド戦争」を遂行していると非難。イギリス各地で相次ぎ発覚したスパイ計画についても、クレムリン(ロシア大統領府)の関与を指摘した。

「GCHQ」と青地に白い文字で書かれた幕と木製の壁を背にした檀上で、「GCHQ」と青地に白い文字に書かれたカードの貼られた木製の演題に向かい話す長官。こい茶色の短髪に黒縁の眼鏡をかけ、白いブレザーの下に黒いVネックのニットを着ている

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画像説明, 就任後初めて公開の場で演説するGCHQのアン・キースト=バトラー長官(27日、ブレッチリー・パーク)

長官は、ロシアがイギリス各地の重要インフラを「執拗(しつよう)に標的としている」と述べ、イギリスは「重大な局面」にあると警告。「これほどの侵略と混乱に直面する中、GCHQはロシアの脅威を弱めて減らすために、情報および防衛のパートナーと共に、絶えず取り組んでいる」と述べた。

サイバー攻撃を防ぐため、GCHQは絶えず取り組んでいると長官は言い、「無謀な破壊工作および暗殺未遂」にも対抗していると述べた。

クレムリンは、イギリス側の主張を否定している。

一方、かつてソ連国家保安委員会(KGB)の情報将校だったアレクサンドル・リトヴィネンコ氏が2006年にロンドンのホテルで放射性物質ポロニウムが混入された紅茶を飲み、殺害された事件について、イギリス政府はロシア政府によるものだと判断している。

また2018年3月に英南部ソールズベリーで、ロシアの元スパイで元ロシア軍情報機関員セルゲイ・スクリパリ氏と娘のユリアさんが暗殺未遂事件の標的になったことについても、イギリス政府はロシアによるものだと結論している。事件では有毒の神経剤「ノヴィチョク」が、スクリパリ氏の自宅玄関のドアノブに塗布されていた。

白い建物を背にロシア国旗が掲げられている。手前には葉のない木の枝が見える

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科学技術と安全保障

キースト=バトラー長官はこの日の演説でさらに、ロシアと中国が平和目的と軍事目的の両方で、宇宙分野に多額の投資を行っていると警告した。

中国は今や科学技術の超大国であり、「情報、サイバーおよび軍事機関全体にわたって」高度な能力を有していると長官は指摘した。

人工知能(AI)技術の世界的な進展については、イギリスおよび同盟諸国が競争相手に先行し続けるための、時間的な余裕はなくなりつつあると、長官は述べた。

「私たちの足元の地面は動いている。しかも急速に動いている」と長官は言い、「サイバーセキュリティーは、すべての企業にとって重大な優先課題だ」と強調した。

「この国の専門家たちは、かつてないほど大量の助言と指針を提供しているが、企業が直ちに行動する必要がある。生計や顧客を守るためだけでなく、この国と経済を最前線で防衛するためだ」

長官は、サイバーセキュリティーの進展に後れをとらないようにするには、テクノロジー業界、学術の世界、さらには一般市民との協力がカギとなるとの見方を示した。

GCHQは、セキュリティー対策が不十分なイギリス企業をフィッシング攻撃やランサムウエアで狙う犯罪組織に対抗するため、多くの時間を割いているという。

このため長官は、「会社の役員室から自宅の居間に至るまで」、すべての人が自分のサイバーセキュリティーを意識するよう促した。

「それは家庭では、パスワードをパスキーに切り替えるなど、重要な対策を今すぐ取ることを意味する。社会全体にとっては、新技術にセキュリティーを組み込み、サプライチェーンを保護し、サイバーセキュリティーの緊急性を10倍に高めることを意味する」

イギリス政府には情報局保安部(MI5)、対外情報部(MI6)、そしてGCHQの三つの情報機関があり、規模はGCHQが最大。サイバーセキュリティーと通信傍受情報を主な任務とするGCHQは、イングランド南西部チェルトナムにあり、「ドーナツ」として知られる巨大な円形の建物が本拠地となっている。

任務の重点が最先端技術のため、国家情報予算の大部分はGCHQに充てられている。

追加取材:オルガ・イヴィシナ(BBCニュース・ロシア語)