ウクライナ、迎撃ミサイル不足を警告 23人死亡のキーウ州空爆で弾道ミサイル撃墜できず

オレンジ色のTシャツを着た男性が、救助隊員の肩に左腕を回し、がれきの中を歩いている。救助隊員は左手でライトを持ち、足元を照らしている

画像提供, EPA

画像説明, 救助隊員の肩を借りながらがれきの中を歩く人
Published
この記事は約 6 分で読めます

ロシア軍による5日夜から6日にかけてのウクライナ・キーウ州への空爆で、ウクライナ空軍は6日、ロシアが発射した弾道ミサイル23発を1発も撃墜できなかったと明らかにした。迎撃ミサイルの「深刻な不足」が原因だとしている。

当局によると、1週間で2度目となるロシアによるウクライナの首都キーウへの大規模攻撃では、少なくとも15人が死亡した。キーウ州のほかの地域でも、ほかに8人が死亡した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、7日からトルコの首都アンカラで始まる北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で、ウクライナに防空システムを提供するための「強力な決定」を下すよう、支援国に訴える。

6日にかけての攻撃について、ゼレンスキー氏は、ウクライナ軍は巡航ミサイルやドローンの迎撃には成功したが、弾道ミサイルは迎撃できなかったと明らかにした。

ゼレンスキー氏はその後、「現代において、弾道ミサイルの恐怖から人々を守るために実際に必要な水準にまで、生産がいまだ拡大されていないというのは、まったく不条理だ」と述べた。

ゼレンスキー氏は5日夜からの「ロシアによる大規模攻撃」について、ミサイル68発と攻撃用ドローン351機が使われたと、ソーシャルメディアに投稿。ウクライナ空軍は、このうちミサイル37発とドローン326機を撃墜または制圧したという。

ゼレンスキー氏は、パトリオット防衛ミサイルが「同盟関係の国々の備蓄のままである」限り、ロシアは住宅を攻撃し続けるだろうと警告した。

ロシアの攻撃で、キーウ住民は再び恐ろしい夜を過ごすこととなった。市内では大きな爆発音と、ウクライナの防空システムの轟音(ごうおん)が響いた。

6日朝には、広い範囲で建物などの破壊が確認された。市内の大型集合住宅3棟は一部が崩落し、一部はミサイルの直撃を受けた。

市内では複数の火災が発生し、ヘリコプターが川からくみ上げた水を運び、消火にあたった。

ウクライナ国家非常事態庁によると、キーウ市内で子ども7人を含む56人が負傷した。キーウ州のほかの地域では計48人が負傷したという。

動画説明, ロシア軍によるキーウ各地への夜間攻撃の様子

ミサイルが着弾したキーウ市ポジルスキー地区の現場では、集合住宅ががれきと化し、地面に大きな穴ができている。救助隊はがれきの中で作業を続けている。

倒壊した集合住宅の巨大なコンクリート片がクレーンでつり上げられ、れんがが地面に落下する中、専門家らは探知犬を投入し、行方不明者を捜索している。

近くのベンチには、女性が泣きながら座っていた。女性は話ができないほど取り乱していた。女性を支援していたチームによると、女性の親族2人ががれきの下敷きになったという。

何もかもを失った住民たちは、警察に被害を届け出るために列をつくっていた。BBCは彼らに話を聞いた。

倒壊した集合住宅の8階に自宅があったという女性は、私たちに話をし始めたものの、やがて顔を背け、すすり泣いていた。ここで暮らす人々は、4年にわたる過酷な戦争ですでに疲弊している。そして今、空爆はさらに激しさを増している。

オレナという名前の別の女性は、「近くで最初の爆発が起きた後、ガラスが粉々になって、私たちを襲った。私たちの頭上すれすれのところを飛んできた。それから、何もかもが揺れた」と語った。

オレナさんは、警報が鳴り響いた際、防空壕(ごう)には行かなかった。疲れ切っていて、仕事の前に眠りたかったのだという。

「落ち着いてきたような気はするけど、まだ全身が震えている」と、オレナさんは言った。

今回の攻撃で、ウクライナが弾道ミサイルを1発も止められなかったことについて、オレナさんは疑問を投げかけた。

「ミサイルは私たちの家に直撃した。恐ろしいことだし、本当に怖い。私たちにはそれを迎撃する手段が何もないようだ。私たちのパートナー国はどこにいるの? 何が起きているの? そういう疑問ばかり浮かぶ」

グレーの服を着た女性が、口を閉じ、カメラを見ている。後ろには緑の木々や草が見える
画像説明, オレナさんは、近くで爆発が起きた後、「ガラスが粉々になって、私たちを襲った」とBBCに語った

ウクライナによるインフラ攻撃への「報復」

今回の攻撃の数時間前、ゼレンスキー氏は、キーウ攻撃で30人が殺害された今月1日から2日にかけての攻撃に続き、ロシアがキーウに対する2度目の「大規模攻撃」を準備していると警告していた。

ウクライナはこの攻撃について、ロシアが意図的に民間地域を攻撃したと非難。対するロシアは、ウクライナがロシア領内の発電所やエネルギー施設を攻撃したことへの報復として、軍事基地とエネルギー基地を標的にしたと主張した。

ウクライナはこのところ、ロシアの重要エネルギー施設に対するドローン攻撃を続けている。先月末には、ロシアが2014年に不法に併合したウクライナ南部クリミア半島の最大都市セヴァストポリで、一時的に停電が発生した。

ウクライナ軍は、ロシアのキーウ攻撃を受けた6日にも、ロシア国内の製油所3カ所を攻撃したと発表した。ロシア中南部オムスクにあるロシア最大規模の製油所も含まれるという。オムスクはウクライナ支配地域から2414キロメートル以上離れており、ウクライナ軍の攻撃目標の中で最長距離の場所の一つ。

ロシア国防省は、ウクライナが発射した長距離攻撃用ドローン625機のうち613機をロシア軍が撃墜したと発表した。

複数報道によると、ゼレンスキー氏は7日に始まるNATO首脳会議に合わせて、ドナルド・トランプ米大統領と会談する見通し。

ゼレンスキー氏は6日のソーシャルメディアへの投稿で、アメリカと、ウクライナの欧州パートナー国が、「我々の防空、ひいては一般市民の命を守るための強力な決定を携えて」首脳会議に臨むことが「極めて重要」だと述べた。

「アメリカとヨーロッパには、この恐怖を止めるだけの力がある」とも、ゼレンスキー氏は述べた。

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、防空能力の強化というウクライナの「緊急の」ニーズについて、首脳会議で議論する方針だと述べた。

2022年2月にウクライナへの全面侵攻を開始したロシアは現在、ウクライナ領土の約5分の1を支配している。

水色の毛布を肩にかけ、右耳に白いガーゼのようなものを着けた男性が、ひどく損傷した白い外壁の集合住宅の前に立っている

画像提供, EPA/Shutterstock

画像説明, 損壊した建物の前を歩く人