【解説】 ホルムズ海峡の「対価20%」撤回が示すのは……トランプ氏は戦争終結に苦慮か

黒い背景の前、トランプ氏が黄色のネクタイを締めたスーツ姿で立っている。

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アンソニー・ザーカー、ケイラ・エプスティーン

イランとの戦争をめぐるドナルド・トランプ米大統領の13日の要求は、わずか24時間で撤回された。このことから、難しい状況から抜け出すために大統領が型破りな方法を模索している様子がうかがえる。

トランプ氏は13日の朝、イランの港湾に対する海上封鎖を再開すると発表すると共に、「アメリカは今後、『ホルムズ海峡の守護者』として知られることになるが、公平を期すため、この非常に不安定な地域に安全と治安を提供する任務の遂行に必要なあらゆる費用のため、すべての輸送貨物について20%の割合で対価を受ける」と書いた。

しかし14日になると、大統領はその案を完全に撤回し、代わりにアメリカの湾岸同盟諸国と「貿易・投資協定」を結ぶと書いた。それを受けてアメリカが、協定の相手国に海峡の安全な航行を保証すると、うかがわせる主張だった。

このいきなりの方針転換は、4カ月以上続く紛争の最新展開だ。イランとの戦争は、一時的な停戦を確保し交渉の枠組みを定めた1カ月前の「覚書」をよそに、終わる兆しが全く見えない。

アメリカ国内でイラン戦争は依然として不人気だ。エネルギー価格の高騰が予想され、米軍と同盟国が再びイランの攻撃を受けるリスクがある。このためトランプ氏は、戦争を拡大しようとはしないかもしれない。

しかし、2015年にバラク・オバマ政権がイランとの交渉の末に成立させた核合意よりも、もっと良い結果につながったとトランプ氏が主張できるような、そうした合意に至らないまま、紛争を終わらせることは、大統領は好まないはずだ。

「終わらないという終わり方が、一番あり得ると思う」と、米シンクタンク「ディフェンス・プライオリティーズ」の中東プログラム責任者、ローズマリー・ケラニド氏は言う。

「戦争は今や消耗戦と化しているし、消耗戦というのはとてもとても長い間、続くことが多い」

米・イラン間の覚書とそれに伴う終戦への期待は、米軍がイラン各地への攻撃を再開するなかで、トランプ氏が米東部時間14日午前10時16分にイラン港湾への海上封鎖再開をトゥルース・ソーシャルで発表したことで、雲散霧消した。

イランは対抗手段として、アメリカの同盟国や湾岸地域の商船に対する攻撃を強化し、ホルムズ海峡を通る船舶の交通を再びほぼ停止させた。

両国間の交渉はここ1カ月近く断続的に続いていた。その間も敵対行為が散発的に続いたため、「停戦」という言葉の意味を試す事態になっていた。

そして今、トランプ氏とアメリカ人は、今回の戦争を通じてほぼ常に直面していた課題に、またしても直面しているようだ。

軍事的には、イランの艦船、航空機、標的を破壊し、イランの防衛能力を低下させた。その意味ではアメリカは目的を達成しつつあったが、政治的には紛争は解決には程遠い状況だった。

イランは軍事的に弱体化しているとはいえ、ホルムズ海峡へのアクセスを依然として拒否する可能性がある。そして、アメリカがこの地域での軍事作戦を劇的にエスカレートさせない限り、イランの行動を阻止するためにできることはほとんどなかった。

トランプ氏が13日に提案した20%の手数料は、アメリカ国民が戦争継続を受け入れやすくなる、そのための手段だったのだろう。これは、全く新しいものではなかった。開戦以来、トランプ氏は何度か同様の取り決めを提案していた。

しかし、マルコ・ルビオ米国務長官はつい先月、ホルムズ海峡を通過する船舶に「手数料」を課すというイランの計画を非難したばかりだった。

「国際水路で通行料や手数料を徴収するなど、どの国にも許されることではない」、「それが既存の国際法だ。世界中の国際水路でそうであるように、(ホルムズ海峡でも)そうあるべきだと我々は考えている」とルビオ氏は強調していた。

トランプ氏は、ホルムズ海峡について方針転換した。これは、大統領には進むべき道筋がはっきり見えていないと、あらためて示すことだ。

6月に交わした覚書について、アメリカとイランの双方が自国の勝利だと主張した。文書は、意図的に曖昧な表現を使い、内容の多くを今後の交渉に委ねていた。

覚書は、ホルムズ海峡における船舶の運航管理においてイランが何らかの役割を果たすことを想定していた。その中には、「イラン・イスラム共和国は、商船の安全な航行のため、最善の努力を尽くして手配を行う」と書かれている。

この役割は自国が担うと、イランが強く主張したものだった。覚書には、イランへの数十億ドル規模の「投資」の約束と国際制裁の解除も、含まれていた。

アメリカ側は、こうした甘い条件をイランに認め、従わなかった場合の結果を警告すれば、イランが地理的優位性を利用してホルムズ海峡の支配をより強硬に主張しようとするのを思いとどまらせることができると、そう考えていたのかもしれない。しかし、少なくとも現時点では、その計算は間違っていたようだ。

「覚書は完全に死んだ」と、前出のケラニド氏は述べた。「覚書が定めていたことはすべて無効になった」。

そしてトランプ大統領とイランは今、相変わらず窮地に立たされている。

イランは再び国内全域を米軍に攻撃されている。それによって、イランには自国領土の主権を守る能力がないことが、あらためて浮き彫りになっている。イラン政権の生命線である石油収入は、海上封鎖の再開によって再び断たれてしまった。

一方、トランプ大統領はまたしても、アメリカ国内に経済的・政治的な負担がかかる事態をいっそう激化させるのか、それともアメリカに敵対的なイラン政権を存続させる形で何らかの解決策を受け入れるのか、選択を迫られている。

「私たちは、振り出しに戻ってしまった。そして、『どちらがより我慢強いか』が、最初からの争点だったのだ」と、米シンクタンク外交問題評議会のエリオット・エイブラムス中東担当上級研究員は述べた。

「どちらが相手より我慢強いのか。石油を輸出できなくなるイランか、それともペルシャ湾の石油を使うアメリカやその他の国々か」

インフレは国内支持率を大幅に低下させるし、イラン戦争は新たなインフレを引き起こすのではないかと、数カ月前から心配されていたが、14日には消費者物価が下落していると発表された。トランプ氏にとっては朗報だ。

しかし、全面的な敵対行為の再開、あるいは紛争の激化は、必然的に原油価格を以前の高値水準へと押し戻し、消費者物価下落という好材料が危うくなる。そうすれば、11月の中間選挙を控えた与党・共和党は、またしても危うい状態に戻ってしまう。

トランプ氏が「対価20%」を13日に発表した後、原油価格は1バレルあたり約10%急騰し、過去6年間で最大の1日当たりの上昇率を記録した。

トランプ氏が4月に最初の海上封鎖を決定した際には、その結果としてイランを交渉のテーブルに着かせることができた。その交渉が、覚書締結とより永続的な平和のための枠組み作りに至った。

ケラニド氏によると、トランプ氏がイランに対して持っていた影響力は、低下するかもしれない。

「自分に簡単に実行できること、確かに実行できることは、(トランプ氏は)すでに試している。彼は軍事目標や政権の標的は攻撃できる。すでにそれはやってみたが、それでもイランが降伏しなかった」

トランプ大統領が次に標的として挙げたのは、厳重に要塞(ようさい)化されたイラン南部の核研究施設、アメリカが「ピッケル山」と呼ぶものだ。ただし、この施設の重要性については疑問符もついているし、花こう岩の地下深くにあるトンネルを米軍が空爆した場合にどれだけの損害を与えられるのか、相反する見方が出ている。

トランプ大統領の最近の動きが最終的に新たな停戦合意と対面協議で終わったとしても、ホルムズ海峡問題、イランの核開発計画の扱い、中東におけるイランの影響力といった、根底にある解決困難な立場の食い違いは、依然として残る。

「ホルムズ海峡に関する合意については、交渉の余地があると思う」と、前出のエイブラムス氏は言う。「しかし、覚書への回帰はあり得ない」。

戦争が5カ月目に近づくなか、トランプ大統領は13日、ヴェトナム戦争を含む他のアメリカの紛争も何年も続いたと改めて指摘した。

しかし、泥沼化したヴェトナム戦争は、リンドン・ジョンソン政権の統治を妨げ、最終的には政権を終わらせた。あの戦争のせいで、アメリカの国際的な地位は少なくとも10年間は損なわれた。トランプ氏は、まさにそのような事態は避けたいと思っているはずだ。

トランプ氏の支持者たちは、トランプ氏が大統領選で非難し続けた、中東における「終わりのない戦争」を繰り返すことにもうんざりしている。

しかし、覚書は崩壊し、停戦は終了し、紛争はさらに続く可能性が迫っている。イランとの戦争は、開戦直後と比べて解決に近づいているようには決して見えない。