トランプ氏とIRSの和解、無効と米地裁 2800億円超の基金設立や税務調査免除の付帯条項に影響か

ダークスーツに青いネクタイを着けたトランプ氏が、左手にファイルを持ち、ホワイトハウスの外を歩いている。白い壁のそばには星条旗が見える

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画像説明, 米野党・民主党と一部の共和党議員は、トランプ大統領と内国歳入庁の和解に基づく「反武器化基金」の設立に反対していた
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米フロリダ州の連邦地方裁判所は13日、ドナルド・トランプ大統領が自身の納税申告書の流出をめぐって起こした訴訟で、5月に成立した内国歳入庁(IRS)との和解について、無効とする判断を下した。トランプ氏とIRSの和解では、IRSは今後、トランプ氏と家族、および関連企業の過去の納税申告を調査することが禁止されることや、過去の政権下で政治的捜査の対象となったと主張する人々に補償を行うことを目的とした、約18億ドル(約2860億円)の「反武器化基金」を設立することが、付帯条項として加えられていた。

キャスリーン・ウィリアムズ判事はこの日、IRSに対する訴訟は不適切な目的で起こされたと判断した。

ウィリアムズ判事はまた、倫理規定違反の有無や、懲戒処分の必要性を判断するため、トランプ氏の弁護人1人について州当局に照会した。

同判事は、トランプ氏と2人の息子、トランプ氏の一族が経営するトランプ・オーガナイゼーションが2026年に起こした訴訟について、対立する二者の争いとは程遠いと指摘。むしろ、トランプ氏と関係のある弁護士や、政府の標的にされたと主張する人々によって行われたものに近いとした。

また、この訴訟は、トランプ氏と、同氏が大統領として統括するIRSとの間の「法的問題や事実上の争点について、司法による解決を求めるものではなかった」との判断を示した。

そして、トランプ氏とIRSの和解について、「大統領と関係のある個人や団体に免責を与え、法律で定義されていない不満を救済するためにアメリカの納税者からの数十億ドルを充てるという合意に、いくらかの正当性を与えようとするもの」だったとした。

今回の判断により、トランプ氏とその息子たちを含む本件の関係者は、今後の法的手続きにおいて、この和解に言及したり、その付帯条項を引用したりすることができなくなる。一方で、IRSは今後、トランプ氏の納税申告に関する調査を進められる可能性が出てきた。

トランプ氏は当初の訴訟で、IRSの元契約業者チャールズ・リトルジョン氏が自分の納税申告書を流出させたことをめぐり、情報漏えいを防ぐための措置が一切講じられていなかったと主張していた。

トランプ氏が民主党のジョー・バイデン氏に敗れた2020年大統領選の直前、米紙ニューヨーク・タイムズはトランプ氏の納税申告書について調査報道を行った。報道では、トランプ氏が大統領に当選した2016年に納税した連邦所得税は、わずか750ドルだったほか、トランプ氏は過去15年間のうちの10年で、所得税をまったく納めていないことが明らかになった。

ウィリアムズ判事は、「トランプ大統領はホワイトハウスに復帰し、自身の元弁護士や、『反武器化基金』の受益者とされる人々の元弁護士を司法省の要職に任命するまで、自らの主張を追求しなかった」と指摘。

「これらの当局者はその後、国を代表して、(トランプ氏の)現在の弁護団やホワイトハウスの元法務顧問と交渉し、『和解』に至った。当事者間に敵対関係があったなどという主張はばかばかしい」とも、判事は付け加えた。

トランプ氏の弁護人の1人、アレハンドロ・ブリト氏については、懲戒処分の可能性をめぐりフロリダ州弁護士会に照会した。ダニエル・エプスティーン弁護士は少なくとも1年間、フロリダ州南部地区で扱う訴訟に関与できなくなる。

トランプ氏の法務チームの報道官はBBC宛ての声明で、IRSが「政治的動機を持つ不正な職員が、私的かつ機密性の高い情報を報道機関に漏えいすることを不当に許した」と主張した。

そして、「トランプ大統領は、アメリカと米国民に害を及ぼした人物の責任を追及し続ける」と付け加えた。

「タックス・ロー・センター」の政策担当ディレクター、ブランドン・デボット氏は、トランプ氏とIRSの合意について、トランプ氏に税務調査規則からの「無許可かつ前例のない」免除を与える「特別取引」で、「税制保護における政治介入」防止の仕組みに反するものだったと指摘した。

デボット氏はBBC宛ての声明で、「裁判所の判断は重要だが、合意全体を無効にし、大統領が将来、同様の自己利益追求を行うことを防ぐには、依然として議会による対応が必要性だ」と述べた。

ニューヨーク大学を拠点とする同センターは、税制と公共政策に関する法的分析を行っている。

「反武器化基金」の設立計画は、5月末にヴァージニア州の連邦地裁判事が一時差し止めを命じ、約1週間後の6月初旬に頓挫した。

同基金の差し止めを求めた訴訟は、同基金は差別的だと主張する男性2人が提起したもの。2人は、トランプ政権による政治的報復の標的にされたが、トランプ政権は自分たちのことを同基金の補償対象として認めないだろうと訴えていた。

議会の明確な承認なしに同基金が設立され、監督体制が不十分なまま運営されることへの懸念から、野党・民主党だけでなく、与党・共和党の一部からも強い反発が巻き起こった。