宇宙船オリオン、月の裏側を通過し帰還開始 地球から最も遠く離れた人類に

画像提供, NASA
米航空宇宙局(NASA)主導の国際月探査プロジェクト「アルテミス計画」で打ち上げられた宇宙船オリオンは日本時間7日午前、月の裏側を通過した。これに先立ち、宇宙船が月の裏側へ回り込むため接近する中で、同日午前8時過ぎ、人類として地球から最も離れた距離に達した。
月の裏側を通過する間、オリオンからの交信は途絶え、予定通り40分間の交信中断の後、ミッションスペシャリストのクリスティーナ・コック宇宙飛行士が、「ヒューストン、インテグリティ、通信確認」と連絡してきた。「インテグリティ」は、宇宙船オリオンのクルー4人が自分たちと船の総称として、自ら選んだ呼び名。
「地球からまた聞けて、最高です」とコック飛行士は喜んだ。続けて、「アジア、アフリカ、オセアニアの皆さん、私たちも皆さんを見ていますよ。皆さんは今、空を見上げると月が見えるそうだけど、私たちも皆さんが見えます」と話した。
米テキサス州ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターの管制室は、「地球よりインテグリティー。私たちの一つのシステム、もろくて、お互いに結びついています。了解。皆さんを見上げることができる私たちは、今そうしています」と答えた。
管制室はその数分後、「皆さんは地球に向かっています。故郷に戻ってもらう準備ができています」と伝えた。

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これに先立ち、月の裏側へ回り込むため接近していた宇宙船は日本時間午前8時7分ごろ、地球から40万6700キロ余りの距離に達した。NASAによると、1970年に打ち上げられたアポロ13号の記録を約6600キロ上回った。
この間、宇宙船オリオンのクルーは、月のクレーターの一つを、リード・ワイズマン指揮官の亡き妻にちなんで「キャロル」と命名した。キャロル・ワイズマンさんは2020年にがんで亡くなった。
さらに、自分たちが選んだクルーと船の名称にちなみ、別のクレーターを「インテグリティー」と名付けた。「Integrity」は、欠けているものがない状態、完全な、誠実、高潔などの意味。

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NASAによると、宇宙船は月面の上空約9000キロを飛行。その間、宇宙飛行士たちはクレーターや断崖、凍結した溶岩流を見分けながら超高精細で撮影するという、「岩を読む」作業を続けた。
飛行士たちが撮影する画像に加え、宇宙船自体もレーザーおよびカメラでデータを取得し続けた。
こうしたデータの累積で月面地図の精度を高めるほか、月の地殻が数十億年かけてどう形成され、衝突によってどう傷いてきたのかの解明が進むと期待されている。
クルーは、無数の穴が開いた地形の上を、太陽光と影がリアルタイムでどう移り変わるかを観察。それによって、どの斜面が危険に見えるのか、どの平坦な平原が着陸船を受け入れられそうか、そして将来の宇宙飛行士が資源を探しに行くべき場所はどこかについて、計画担当者により具体的な感覚を与えることができる。
研究者たちは特に極域の観測に強い関心を寄せている。月の極域には水氷が存在するかもしれないと推定されており、将来のミッションはその付近への着陸を目指している。
科学者たちはまた、太陽光や静電気の力で舞い上がる「浮遊する月の塵(ちり)」から生じる特徴的な発光の有無にも注目している。これは、ざらついた粒子が月面上空でどう動くか理解するのに役立つ。

月の裏側を通過後、宇宙船のクルーは船内から皆既日食を観察した。クルーの位置からは、月が太陽を完全に覆うため、太陽のコロナ(太陽の外層大気の一番外側にある薄いガス層)を見ることができた。
ヴィクター・グローヴァー飛行士は、目にした日食の様子について、「まるでサイエンスフィクションだ」「現実離れしている」と表現。
「太陽が月の後ろに隠れて、コロナがまだ見えている。とても明るく、月のほぼ全体を取り囲むような光輪を作っている。地球側に目を向けると、すでに地球照が現れている。つまり、太陽が月の背後に沈んでから、ほとんど数秒後には地球照が見える」と、飛行士は報告した。
グローヴァー飛行士がさらに「オレンジ色」に見えるものについて報告すると、管制センターはそれはおそらく火星だと返信。「私たちがこれから向かう未来を見ておく、いい機会ですね」と管制官は飛行士たちに伝えた。









