【解説】 マンチェスター・シティめぐる裁定で、英プレミアリーグでは不確実性と混乱が長引く

スタジアム正面のアップの写真。前面に英語で「マンチェスターシティへようこそ」と書かれている
画像説明, マンチェスター・シティの本拠地エティハド・スタジアム
Published
この記事は約 5 分で読めます

デイル・ジョンソン、サッカー問題担当編集委員

この件では、聞き取りが始まってから2年と10日、規則違反に正式に問われてから1329日がたって、マンチェスター・シティに対する裁定が出されたことがわかっている。

ただし、これは米紙アスレチックのスクープのおかげだ。プレミアリーグもマンチェスター・シティーも、裁定について発表していない。BBCスポーツはその後の取材で、裁定文書がクラブ幹部に送られたことをつかんでいる。

シティは声明を出したが、有罪とされたのかには触れず、「プロセスは継続中」との見解を示した。

混乱と不確実性は、今後さらに拡大するとみられる。

違反の内容が非常に深刻なため、シティが何らかの形で、リーグでの勝ち点を剥奪(はくだつ)されるのは避けられない情勢だ。ただ、シティは一貫して不正行為を否定しており、上訴する可能性はある。

一方で、プレミアリーグの他のクラブが、シティを相手に損害賠償を求める訴えを起こす可能性もある。

この問題は今後、どう展開するのか。考えられるシナリオを以下に挙げる。ただし、どれも素晴らしいものではない。

シナリオ1:処罰について今シーズンは発表がない

処罰の決定は有罪の認定より速やかになされるのが普通だ。だが、この件で確実なことは何もない。

BBCスポーツの取材では、処罰に関する独立委員会が聞き取りを行うのは、まだ数カ月先の可能性がある。結果については、上訴が決着するまで公表されないこともあり得る。

聞き取りでは、罰金、ポイント剥奪、降格など、あらゆる可能性が検討される。

委員会は数百ページに及ぶ証拠書類を精査し、処罰を決定する。

マンチェスター・シティは、ファイナンシャル・フェアプレー(FFP)の規則を満たし、選手や監督へ支払いをするため、企業の口座を通じてスポンサー収入を水増ししたとされる。また、調査に協力しなかったとされる。

シティは、財務規則をかいくぐることで、本来の財務状況では認められない高額選手を獲得できる立場にあったとされる。

もし、シティがほとんどの容疑で有罪とされたことが明らかになりながら、今シーズン中に制裁措置が決まらなかったとしたら、競技の公平性の点で、それはどのような意味をもつのか?

最終的にペナルティーが科せられるとして、今シーズンにさかのぼって適用される可能性はあるのか? これは可能性が低い。

マンチェスター・シティがリーグ優勝したらどうなるのか?

現在の順位が下から3番目のコヴェントリーがこのままシーズンを終えて降格となり、シティへの処分が今シーズン中に出されていれば残留できていた――という事態になった場合、どうなるのか?

この動きの鈍さは、プレミアリーグにとって非常に悪いニュースだ。

制裁での合意こそ、この問題における最も円滑な解決法だと、強く主張する声がある。

だが、プレミアリーグにとっては受け入れがたい案かもしれない。恐らくは軽い処分を望むであろうシティと、交渉しなければならいからだ。

シナリオ2:今シーズン中に処罰が出るがシティが上訴する

勝ち点剥奪の処分は通常、上訴の権利を留保したうえで、直ちに適用される。剥奪の規模が、事実上の降格となるほど大きい可能性もある。

マンチェスター・シティのプレミアリーグ加盟資格の取り消しもあり得る。それがシーズン中にどのように適用されるかは不明だ。

多額の罰金が科される可能性もある。ただ、他のクラブへの勝ち点減点を考えると、それは考えにくいだろう。

問題は、それがいつ発表されるかであり、上訴が審理されてどれくらい後になるのかだろう。

可能性は低いが、上訴が決着して初めて、処分が適用されることも考えられる。

もしそうなれば、処分が今シーズン影響するチームから抗議の声が上がるのは確実だ。そうしたチームは、通常どおり、即時適用を要求するだろう。

シナリオ3:上訴が迅速に審理され最終決定が発表される

プレミアリーグの健全性を保ち、すべてのクラブの理解を得るためには、最終決定はできるだけ早く出される必要があるだろう。

プレミアリーグは、この問題がシーズン終了の2カ月前まで長引くことを望んでいない。だが、この件に関しては保証されたものは何もない。

考慮すべきは、マンチェスター・シティが上訴で勝つ可能性もあることだ。2020年7月に欧州サッカー連盟(UEFA)から2年間のチャンピオンズリーグ出場禁止処分を受けた際も、シティは上訴して勝訴した。

勝訴すれば、クラブ本拠地のエティハド・スタジアムで祝うことになるだろう。だが、それでこの件のごたごたが終わるとは考えにくい。

シナリオ4:審理が終了しても、この件は終わらない

エティハド・スタジアムの外観写真。ETIHAD STADIUMという文字とチームのマークが見える
画像説明, エティハド・スタジアム。ここを本拠地とするマンチェスター・シティは、問題行為があったとされる期間に国内で七つのタイトルを獲得した

プレミアリーグの各クラブは、この件に関してマンチェスター・シティから賠償金を得ることについて、司法の専門家に相談をしている。

プレミアリーグの2クラブで上級幹部を務めた人物の1人は、各クラブがマンチェスター・シティーに対し、個別に賠償請求をするだろうと述べた。

著名弁護士の1人は、その手続きをリーグが一元化する可能性もあると、BBCに話した。

プレミアリーグの規定では、クラブ同士が損害賠償を求めて法的措置を取ることができる。

実際、同リーグのエヴァートンは6月、3年間にわたって収益性と持続可能性に関する規則(PSR)に違反したとして、バーンリーに3500万ポンド(約73億円)の賠償金の支払いを命じられた。この違反行為がプレミアリーグ残留の可能性に影響を与えたとバーンリーが主張し、降格に伴う損失への賠償を求めたのだった。

エヴァートンは上訴しており、関係者によると、裁定に対して「徹底的に、断固として」争う構えだという。これは、今回のマンチェスター・シティの件で、興味深い背景となり得る。

いつまでさかのぼって訴えを起こすことができるのかは明確ではない。

英リヴァプール大学のキーラン・マグワイア教授(サッカー関連財務)は、プレミアリーグの伝統的なハンドブックには「時効に関する記述はない」とBBCスポーツに説明した。ただしこれについては、シティ側が法的に異議を唱える可能性がある。

賠償金がどのくらいになるのかも大きな問題だ。チャンピオンズリーグ出場権の獲得だけでも、膨大な賠償請求につながる可能性がある。

勝ち点の剥奪、罰金、損害賠償請求――。プレミアリーグはいま、非常に厄介な状況に置かれており、それはすぐに解決しそうにはない。