ニュートリノ観測に「多大な貢献」、ベルギーの教授にノーベル物理学賞 南極で観測

画面中央には星空と天の川が広がり、地平線沿いには緑色のオーロラが浮かんでいる。手前には黒い建物と白い柱のような階段を持つ天文台が見える
画像説明, フランシス・ハルツェン教授は、アイスキューブ・ニュートリノ観測所の開発への「決定的な貢献」により、ノーベル物理学賞を受賞した
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パラブ・ゴーシュ科学担当編集委員

スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2026年のノーベル物理学賞を、ベルギー生まれのフランシス・ハルツェン教授に授与すると発表した。ハルツェン教授は、宇宙から飛来する粒子「ニュートリノ」を検出する観測装置について先駆的な研究を行い、遠い宇宙の解明に貢献した。

ハルツェン教授は、南極の観測施設「IceCube(アイスキューブ)」のプロジェクトを主導した。「アイスキューブ」では、1立方キロメートルの南極の氷に光センサーを装着し、ニュートリノ粒子を検出する。ニュートリノは、宇宙における激しい高エネルギー現象に関する情報を運んでくる。

スウェーデン王立科学アカデミーは、ハルツェン教授について、「その先見性と科学的リーダーシップは、ニュートリノ観測施設アイスキューブにとって極めて重要だった」と述べた。

同教授は1988年に、南極でニュートリノを観測するという構想を初めて発表した。

現在は米ウィスコンシン大学マディソン校に在籍し、アメリカ市民権を持つハルツェン教授は記者会見で、自分のアイデアがこれほど上手くいったことに驚いたと述べた。

「自分がどれほど幸運だったか、強調しておく必要がある。というのも、このプロジェクトを始めた当初、誰もがこれは良案かもしれないとは思っていたものの、私を含め、実際に成功すると考えていた人はごくわずかだった」

ニュートリノは観測が難しい素粒子だ。太陽は膨大な数のニュートリノを生成しており、毎秒数十億個ものニュートリノが人の爪ほどの大きさの領域を何の問題もなく通過している。

しかし、「アイスキューブ」は、太陽系のはるか彼方にある遠い銀河系で起こる激しいプロセスによって生成される、はるかに高エネルギーのニュートリノを探している。

「アイスキューブ」は、1立法キロメートルの氷塊にドリルで穴を開け、そこに凍らせた長いケーブルに取り付けられた数千個のセンサーを取り付けている。

ニュートリノは、遠い銀河系で起きる激しく根本的なプロセスを指し示す、天文学上のメッセンジャーだと言ってもいい。

「アイスキューブ」では、ほとんどのニュートリノは氷をまっすぐ通過するが、ごくまれに氷と相互作用し、特徴的な閃光を発する粒子を生成する。

この希少な信号には、そのニュートリノの発生源や、ニュートリノを生み出した極限的な条件に関する手がかりが含まれる。これによって科学者たちは、通常の望遠鏡では簡単に観測できない場所を調査できる。

アイスキューブがニュートリノを検知する仕組みを示したイラスト。六角柱の氷の塊が描かれており、上面(地表面)に信号データを収集する建物がある。この氷にドリルで穴を空け、ケーブルを通して凍らせてある。ケーブルには、ニュートリノの衝突を検知する光センサーがついている。ほとんどのニュートリノが氷を通り抜けるが、部のニュートリノは原子の原子核と衝突する。その衝突角度や方向から、宇宙におけるニュートリノの起源を突き止めることができる。出典はスウェーデン王立科学アカデミー

「素晴らしい計測機器を提供してくれた国際的な研究者と技術者のチームを、フランシス・ハルツェン氏は率いてきた」と、ノーベル物理学賞委員会長のマーク・ピアース教授は述べた。

「彼の粘り強さと科学的先見性は、新しいタイプの天文学への道を開いた」

星空が広がる黒い空に、青い天の川が中央を貫いている
画像説明, 天の川銀河はニュートリノで構成されている

ニュートリノが原子核に衝突する稀なケースでは、高速で移動する荷電粒子が発生する。高感度の光検出器なら、氷の中を高速で移動するこうした粒子が発する青い光を捉えることができる。

その光のパターンとタイミングから、科学者たちはそのニュートリノがどの方角からやってきたのかを推定し、宇宙のどこがその起源なのかをたどることができる。しかし、こうした相互作用があまりにも希少なため、観測所には膨大な量の透明な氷が必要だった。

そのために南極大陸の広大な天然氷床を利用しようというのが、ハルツェン教授のアイディアだった。こうして、南極にニュートリノ観測所を建設し、氷の奥深くに数千個の光センサーを埋め込むという大胆な計画が始まった。

ニュートリノは物質を簡単にすり抜ける幽霊のような性質を持つため、検出が非常に難しい。だからこそニュートリノは、遠い宇宙からの強力なメッセンジャーになり得る。

ニュートリノは通過する物質とほとんど相互作用しないため、光が簡単に透過できない高密度領域をそのまま通過できる。

さらにニュートリノには電荷がないため、宇宙を移動中にも磁場の影響を受けず、進路が曲がらない。そのため科学者たちは、ニュートリノがやってきた方向からさかのぼることで、その発生源を特定できる。

加えて、ニュートリノのエネルギーからも、ニュートリノの誕生プロセスについて推察できる。それをもとに、星の爆発や巨大ブラックホールの周辺環境で、粒子がどのようにして驚異的なエネルギーまで加速するのか、科学者は調べることができる。

イギリス物理学会のルイ・バーソン科学部長は、「アイスキューブ」によって、従来の望遠鏡では観測できない現象を天文学者が調査できるようになったと述べた。

「その後の発見は、宇宙の中でも特にエネルギーにあふれて神秘的なプロセスの一部について、私たちが理解するのに役立っている。ハルツェン教授の研究のおかげだ」と、バーソン氏は付け加えた。

英オックスフォード大学のスビル・サルカル教授(物理学)は、ハルツェン教授の科学への貢献を評価する際に、フランスの小説家マルセル・プルーストの言葉を引用した。

「ただひとつ正真正銘の旅、永遠の若さのための唯一の泉は、新たな風景を求めて旅立つことではなく、ほかの多くの目を持つこと、他者の目で、何百もの他者の目で宇宙を見ること、それぞれの他者が見ている何百もの宇宙を、その他者が構成している何百もの宇宙を見ることだろう」

「ハルツェン氏は、まさにそのような発見の旅において、アイスキューブの共同研究を率いて、私たちの宇宙へ向けて新しい窓を開いた」