土石流の死者、計1000人を超す ネパールで水力発電所に閉じ込められた600人以上の救助活動続く

迷彩服を着てヘルメットをかぶった人々が、土のトンネルの入り口に立っている

画像提供, Nepal Army/Reuters

画像説明, ネパール軍の関係者らは、水力発電所のトンネル内に閉じ込められたとみられる従業員らを救助するため、斜面を爆破する手段を取っている
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ジェイク・ラパム、ケリー・アン、BBCネパール語

ネパールと中国・チベットの国境沿いの地域で26日に発生した大規模な土石流は、1日夕方までに死者が計1000人を超え、行方不明者は計約4500人となっている。ネパールのトリシュリ川沿いの水力発電所では、泥が流れ込んだトンネル内に従業員600人以上が閉じ込められているとみられ、家族らが生存の望みをかけるなか、救出活動が進められている。

ネパールの災害管理当局は、土石流による死者が1000人を超えたと発表した。行方不明者は推定3925人で、うち592人が外国人だとした。

一方、中国国営メディアが当局の公式発表として伝えたところでは、チベットにおける死者は16人、行方不明者は546人に上っている。

ネパールのバレンドラ・シャハ首相は8月31日、救助活動が「強化された」と述べ、これまでに1万1379人が救助されたと発表した。

ネパール側の行方不明者のうち7分の1近くを、川沿いにある複数の水力発電所の従業員が占めている様子。シャハ首相は、発電所からこれまでに279人が救出されたとした。

ネパールは、電力を水力発電に大きく依存している。長い年月をかけて、山岳地帯の川沿いに水力発電所を設けてきた。当局によると、今回の土石流では少なくとも11施設(建設中を含む)が被害を受けたとされる。

救出活動は、中国とネパールの軍関係者らが中心となった多国籍チームが主導している。インド、韓国、オーストラリアの専門家も参加している。

水力発電所の一つ、トリシュリ3Aでは31日、爆発物で斜面を爆破し、空気を送り込んだ。閉じ込められた人々の生存率は、時間の経過とともに低下が危ぶまれている。

ティシュリ川の水力発電所の位置を示す地図。中国・ネパール国境付近の氷河崩壊による洪水が、ボーテコシ川とティシュリ川を下った様子を示している。ラスワガディ水力発電所、ランタンド水力発電所、チリメ水力発電所、アッパー・ティシュリ1、ティシュリ3A、ティシュリ3Bの位置が示されている。下の地図は、被災地域がカトマンズ北部にあることを示している

家族らは救出を祈っている。

夫が発電所で働いていたというシタ・パンデイさんは、ネパール紙カンティプールに、「酸素供給装置が内部にあるので、彼が生きている可能性はまだ50%あると思っている」と述べた。

行方不明となっているエンジニア、アウルス・バンダリさん(33)の妻アヌシラ・バンダリさんは、「彼が見つかってほしい。家に帰ってきてほしい」とBBCネパール語に話した。

親族が発電所で閉じ込められているというジバン・カドカさんは、「時間がたつほど私たちの希望は薄れる。救助活動をもっと急速に進める必要がある。私たちにとっては一秒一秒が大切だ」、「救助活動が腹立たしいほど遅い」とカンティプールに話した。

発電所「アッパー・トリシュリ1」でエンジニアの兄ミランさんが働いていたというプリヤ・カレルさんは、「発電所から戻ってきた人たちは、トンネルの中に人がいると言っていた」、「軍が早く到達すれば、彼らは助かる望みがある」とBBCネパール語に話した。

土と岩のトンネル入り口付近で、黄色いヘルメットや蛍光ベストを着けた救助隊員が、奥をのぞき込むように腰をかがめている。地面は冠水している

画像提供, Reuters

画像説明, チリメ水力発電所のトンネル。各発電所では、地元労働者や移民労働者、高度技能をもつ技術者など数百人が働いている

発電所の一つでは31日、救助チームが発電施設へのトンネルに入ることができた。だが、中で誰も見つからなかったため引き上げたという。

ネパール当局の地下捜索活動を遠隔支援しているオーストラリア人エンジニアのアーノルド・ディックスさんによると、救助隊はトンネルの発見に苦労しているという。

「(トンネルの)痕跡が消えてしまった。何もかもが失われた。まるで月面の風景のようだ」と、ディックスさんはBBCラジオに話した。

かつて国際トンネル協会の会長を務めたディックスさんによると、発電所の位置が分かれば、救助隊は掘削や「岩の爆破」によって接近を試みる。ただ、「家よりも大きい、見たこともないような岩が転がっており、途方もない作業になる」という。

地下環境が地上の土石流から従業員たちの身を守った可能性もあり、閉じ込められた人々の生存について希望を抱いていると、ディックスさんは話した。

一方、土石流の最初の発生地点からはるか下流に位置するチトワン郡では、川岸に約300体の遺体が流れ着いた。それを受け、急きょ仮の埋葬が進められた。

郊外の森林の広い範囲で先週末、穴が掘られた。医療スタッフとボランティアが、身元不明の遺体からDNAを取り出す作業に当たった。

同郡トップのガネシュ・アリヤールさんは、「冷凍庫が足りない。(中略)仕方なく、仮埋葬という最後の手段を取った。本当にどうしたらいいのか」とBBCネパール語に話した。

白い防護服を着た人々が、森の中で遺体を乗せた担架を運んでいる

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画像説明, ネパール・チトワン郡では当局が身元不明の遺体の埋葬を進めている

中国当局は、実際の死者数は報じられているよりはるかに多いとの臆測をインターネットで流した人に対し「行政処分」を科している。その内容は、警告、罰金、短期拘束まで多岐にわたる。

一方、ネパールでは当局は、洪水に関する誤情報とみなしたオンラインコンテンツの削除を命じている。

動画説明, 【分析】 ネパール・中国国境の土石流、経路と被害をたどる

追加取材:ジュガル・プロヒト(チトワン郡)、ビニタ・ダハル(BBCネパール語)